「脱百貨店」を掲げるJフロント、その先にある生き残り策を聞いた
聞き手・益田暢子
コロナ禍での一時休業やインバウンド需要の消失で、百貨店業界は苦戦が続く。そんななか、大丸松坂屋百貨店を運営するJフロントリテイリングは本業への依存から脱却しようと、不動産事業の強化を進めている。始まりは、約20年前に当時の社長が放ったあるひと言だったという。好本達也社長に聞いた。
――「脱百貨店」の方針を掲げ始めたのは、いつからですか。
「20年ほど前のことです。かつて百貨店は自分たちで商品を仕入れて販売していましたが、店頭で商品が売れた時点で『仕入れた』と見なす『消化仕入れ』がだんだん主流になりました。このやり方は取引先に売り上げ機会を与えて、家賃をもらっているようなものです。当時の大丸(現大丸松坂屋百貨店)の奥田務社長が『我々は小売業をやっていると思っているかもしれないが、従業員の大半は不動産業をやっているんだ』と、はっきり言いました。当時はぴんときませんでしたね。何を言っているんだろうと」
「奥田社長は海外経験が豊富…