第4回性被害の声上げ続けた先に 北原みのりさんが感じる「聞く側の変化」

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聞き手・佐藤美鈴
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 映画や文学、演劇など文化芸術界で広がりをみせる#MeTooムーブメント。性暴力を告発する声は、これまで日本でも幾度となく上がってきました。2019年に「同意のない性交」と認定しながら無罪とする判決が相次いだことへの抗議と、性暴力の根絶をめざして各地に広がった「フラワーデモ」の呼び掛け人で作家の北原みのりさん(51)は「語る人はずっと語ってきたけど、聞く側が変わった」と指摘します。北原さんがみる「#MeTooの現在地」とは。

きたはら・みのり

1970年生まれ。作家。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」代表。性暴力の根絶を訴える「フラワーデモ」の呼びかけ人。「性と国家」「奥さまは愛国」(いずれも共著)など、ジェンダーやフェミニズムに関する著作多数。

 ――文化芸術界で性暴力の告発や連帯の動きが広がっています。日本の#MeTooのこれまでと現状について、どう見ていますか

 「性暴力問題に関わってきたけれど、#MeTooは日本では大きな流れにはなっていなかった。2017年に(ジャーナリストの)伊藤詩織さんが声を上げた時にも、私はすぐに動けなかった。多くの方もそうだったと思うんです。その後検察審査会不起訴相当とされたニュースを見て、これは動かなくちゃいけない時だと目が覚めました」

 「詩織さんが最初に声を上げた時、なぜすぐに一緒に闘えなかったのかといえば、メディアもそうだったと思いますが、起きた事件に対して中立を保つような振る舞いが身についてしまっていたのではないかと思います。私は『慰安婦』の被害者の女性たちにも話を聞いてきて、運動にも関わってきた。それなのに詩織さんの時にすぐに動こうとしなかった自分自身にショックを受けました」

太い流れができ 絶対味方がいる

 「詩織さんの訴えは検察審査会で不起訴相当とされて、刑事では闘いようがなくなった。そのニュースを聞いた時、私はたまたま韓国にいて、性暴力被害者の運動や支援者たちの話を聞いていました。あらためて、被害者が声を上げているのを見ながら、行動を躊躇(ちゅうちょ)している時間がどれだけ被害者にとって酷なのか、この人の言っていることをどう信じたらいいんだろうと迷っていること自体が、もう加害なんだ、と。性暴力の被害者が声を上げるメリットなんて何一つない。それなのに声を上げていることに、まずは寄り添うべきなんだということを、私もその時、ようやく気付くことができた。その後、世界的に#MeTooが始まりました」

 ――そこから動き始めた、と

 「『慰安婦』運動を一緒にしていた梁澄子さんとともに支援の会を立ち上げたいと詩織さんに伝えた時、彼女は『たくさん被害者がいるのに、私だけ支援されるのはいけないんじゃないか』ということをおっしゃりました。『一人で闘う』ということが、被害者にとっても当たり前になってしまっていたのだと思います。これまでも声を上げた被害者はいたのに、毎回毎回、被害者がたった一人でゼロから闘わなくちゃいけない状況に、胸がつぶれるような思いになりました。それが4、5年前の状況です」

 「そこから準備をしながら、2019年4月10日に詩織さんの支援団体の立ち上げが行われ、たまたまではありますが、翌日11日に性暴力事件の無罪判決に抗議するフラワーデモを呼びかけました。驚いたのは、デモの場でも性被害者が自らの被害を語り始めたことです。詩織さんの影響は大きかったと思います。それでも、フラワーデモに対して『被害者に話させるのはどうなのか』『本当にその人を信用して良いのか』『一方的に加害者とされる側の人権はどうするのか』などと言われました。でも、性被害を涙ながらに訴える声を前に、まずはこの声を聞くことが重要なのだと、フラワーデモを重ねるたびに確信しました」

 「これまでも声は上がっていた。一人ずつやると無視されることもあるけれど、今は太い流れができてきている。もちろん批判もあるし無視されることがあるかもしれないけれど、そこで話すと絶対味方がいる、という安心感がある。この数年間で作ってきた流れの中に、映画界の#MeTooがあり、文学界の人たちも声を上げ始めたという流れが生まれた。やっぱり時間をかけて積み重ねてきた成果は大きいな、と思いました」

 ――被害を語ること、声を上げることについて変化を感じますか

 「語る人はずっと語ってきた…

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