第3回助監督の涙で「パワハラセクハラ禁止」 行動起こした深田晃司監督

有料記事

聞き手・佐藤美鈴、細見卓司
[PR]

 映画界で性暴力の告発が相次いだことを受け、監督有志のグループが3月、「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します」と題した声明を発表しました。6月には、フランスをモデルの一つとして業界の労働環境保全や製作現場への資金援助などを図る映画界の統括組織「日本版CNC」の設立を求める会を立ち上げ、日本映画界の改革に向けて一歩を踏み出しました。メンバーで映画監督の深田晃司さん(42)は、自身の経験を振り返りつつ、「ハラスメントはゼロにはならない。起きてしまうことがあることを前提に向き合っていかなければ」と話します。

ふかだ・こうじ

1980年生まれ、東京都出身。99年に映画教育機関「映画美学校」(東京)に入学し、自主制作を始める。監督作に「歓待」「ほとりの朔子」「淵に立つ」「よこがお」「本気のしるし」など。独立映画をサポートし、多様性の創出を目的としたNPO法人「独立映画鍋」の共同代表理事を昨年まで務めた。是枝裕和、諏訪敦彦ら監督有志で作る「日本版CNC設立を求める会」のメンバー。

スタッフ志望なら辞めていた

 ――ハラスメントに対して自らの考えを示した声明を出すなど、これまでも様々な形で発信、行動を起こしてこられましたが、ご自身の体験が大きいのでしょうか

 「19歳で映画美学校に入って学びつつ、20歳の時にプロの現場も経験したいという気持ちで、ボランティアで照明助手を始めました。長編だけど低予算のアクション映画で、ほぼ連日徹夜、最終日は30時間も撮影が続き、現場の過酷さを知りました」

 「その後、予算が数億円の映画に装飾助手として呼ばれ、美術や大道具、小道具など多部署の中の一番の新人として働きました。経験もなく、相応にミスをやらかしていたんだとは思いますが、連日全ての部署から怒られるという感じで、『死ねよ』『てめえに映画なんて作れねえよ』といった人格否定の言葉や罵倒も日常茶飯事で、蹴られたり殴られたりしました。ひたすら『すいません、すいません』と耐えて、深夜の1時、2時にタクシーで家に帰って、少し休んでまた朝から出勤という毎日で、その時はそれがそんなにおかしいとは思っていなかった。自分の能力がないからだと思っていました」

 「ただ、今から思うとやっぱりあれはどう考えてもパワハラだし、殴る蹴るは暴行です。自分はたまたま監督志望だったので自主映画の道に進めましたけど、もしスタッフとして映画業界でやっていきたいと思っていたら、たぶん辞めていた。そうやって辞めていった人がたくさんいるはずというのは、本当に考えなきゃいけないと思います」

 「一方で、ほとんど自費で自主映画を作り始めると、やっぱり現場はすごく大変なんです。皆に満足なギャラも払えないし、撮影時間もどんどん長くなっていく。そんな20代の半ばごろから、フランスの助成制度や保険制度の話を友人から聞いて興味を持ち、過酷な労働環境をどうすればいいのか、フランスのCNC(国立映画映像センター。興行収入から1割強をチケット税として徴収するなどし、映画製作や配給、劇場などへ助成するとともに、労働環境保全やハラスメント対策を促している)や日本の東宝争議(1948年に東宝の所属俳優らが入る労働組合と会社側が衝突した大規模な労働争議)について調べて記事に書いたり、『映画とお金を考える』というシンポジウムを開いたりしました。同時に自分の映画もなんとかしなきゃと思い、予算を少しでも増やしていこうと自主制作ではなく製作委員会を組むようになりました」

 ――映画界における性加害については、どう向き合ってきましたか

 「自分は下駄(げた)を履い…

この記事は有料記事です。残り3659文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(秋トクキャンペーン中)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません。

【10/18まで】有料記事読み放題のスタンダードコースが今なら2カ月間無料!

連載声をつなげて 文化芸術界から#MeToo(全15回)

この連載の一覧を見る