稲畑汀子、生の証し 「俳句集成」刊行 未刊句集加え5398句収録

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西秀治
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 朝日俳壇の選者を約40年間務め、今年2月に91歳で死去した俳人・稲畑汀子さんの生涯の作品を網羅した『稲畑汀子 俳句集成』(朔出版)が刊行された。既刊の7句集に未刊句集「風の庭」を加えた5398句が収録されている。

 最初に掲載されているのは代表作の一つ〈今日何も彼もなにもかも春らしく〉。これを含めて1950年代の句には〈派手と知りつゝもセーター赤が好き〉〈胸に挿す薔薇(ばら)の香りはわが香り〉など、みずみずしさがあふれている。

 80年代には〈落椿とはとつぜんに華やげる〉〈空といふ自由鶴舞ひ止(や)まざるは〉〈初蝶(はつちょう)を追ふまなざしに加はりぬ〉などの名句が並び、円熟味が加わる。〈一枚の障子明(あか)りに伎芸天(ぎげいてん)〉〈さゆらぎは開く力よ月見草〉。90年代は新しい表現にも挑んで〈三椏(みつまた)の花三三が九三三が九〉といった句を生んだ。

 句集「花」は圧巻。俳句で「花」は桜を指す大きな季語で、300句すべてが奈良・吉野の桜を詠んだものだ。〈一片の誘ふ落花に山動く〉

 未刊句集「風の庭」は、94年から2019年までの1009句。〈生きてゐることが感謝の雪の朝〉。日本伝統俳句協会の岩岡中正会長は「一切を諾(うべな)う『肯定の文学』である」と評している。

 祖父で俳人の高浜虚子とやり取りした書簡も掲載したほか、父で俳人の高浜年尾が第1句集に寄せた序文も採録した。「無理な句は絶対に作つて居らない。いつも写生に忠実であることが、汀子の今後の作句の進歩に役立つて行くものと思ふ」と述べている。

 朝日俳壇の選者も務めた祖父、父に師事したことを踏まえて、稲畑さんは89年刊の「汀子第三句集」の「あとがき」にこう書いている。「花鳥諷詠(ふうえい)、客観写生が伝統俳句の大道であると信じ、この大道を踏み誤らないようにとひたすら努めてきた今、私は決してこの大道を外れることは無いだろうといういささかの自信を得た」

 『俳句集成』編集にあたって…

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