天井も壁も、床の一部さえも崩れ落ちた教室の黒板に、白いチョークで「2021年10月27日」と記してあった。
教室がまだその形を保っていた頃、最後の授業が行われた日付だ。
校舎の前には開けた砂浜が広がる。
数十メートル先で、かつて校舎を襲った海が白波を立てていた。
アフリカ西部ガーナの漁村フベメにあるフベメ・ローマカトリック初等学校。昨年11月、暴風による高潮で破壊された。
漁師のラファエル・クワゾさん(40)は「学校が波にやられたのはこれで3度目だ」と、憤りを込めるように言う。
迫り来る海から逃れるため、学校はこれまで2度、内陸に移転したが、それでも被害を防ぐことができなかった。
移転前の校舎は、すでに村ごと海の下に消えている。
ガーナの海岸沿いの村々が、波による海岸浸食によって年々地上から消えつつある……。
そんな現状を伝えるテレビニュースを南アフリカの自宅で見て大変だと思い、取材しようと決めた。
今年3月9日、その最前線となっている漁村フベメを訪れた。
消えたのは校舎だけではありません。記事後半では、深刻な海岸浸食の実態を動画でもお伝えします。
フベメには、たどりつくだけ…
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