「命をあげたい」と夫は言った 難病が娘に遺伝、家族3人の14年
市野塊
「発作が起きた」
米国ハワイ州の自宅で、塩沢淳子さん(63)は夫の千秋さんから電話を受け、息をのんだ。
「いよいよ始まるのか」
当時8歳だった娘の紅梨(くり)さんに、初めててんかんの症状が出た。
2003年12月、父娘2人で自宅近くのコースを通るホノルルマラソンを観戦しているときのできごとだった。
3年ほど前。MRI検査で脳波の異常が示され、発作が起きる可能性があると医師から言われていた。
淳子さんが駆けつけると、紅梨さんはマラソンの医療スタッフに看護されていた。
すぐに意識を取り戻したが、紅梨さんはパニックになり1時間近くも泣き続けた。
ところが、症状はてんかんの発作だけにとどまらなかった。
この日以降、紅梨さんの様子が変わった。
読めていたはずの教科書が読めない。指が震えて、あやとりもできない。友達との遊びについていけない――。
「なんでできないの」
紅梨さんは自分の手をたたいていらだった。やがて、言葉もうまく発せなくなっていった。
だが、変わっていったのは紅梨さんだけではなかった。
同じころ、千秋さんの様子にも変化が見え始めた。
似通う2人の症状 医師は余命を告げた
性格が変わったように怒りっ…
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