• アピタル

怖い川の誘惑 大事なので179回言います「ライフジャケット着て」

滝沢卓
[PR]

 夏のレジャーで気をつけたいのが、水の事故です。実は子どもが溺れて亡くなるようなケースは6割が川で起きています。「大人が見ていれば大丈夫」と思っていても、川には一瞬にして溺れてしまう危険な「落とし穴」がたくさん潜んでいます。リスクをできるだけ減らすには、ライフジャケットを着て遊ぶこと。決して大げさな話ではありません。

「大人が見てれば…」だけは危険

 川の流れが穏やかで浅いから子どもを遊ばせるにはちょうど良さそう――。でもそれは、単に「見た目」だけの話かもしれません。

 自然の川には

 ・ヌルヌル滑りやすいこけが底にある

 ・同じ場所でも急に流れが速くなる

 ・急に足がつかないほど深くなる

 といった、パニックになりやすい危険がたくさん潜んでいます。

 「浅いところで遊ぶ」と子どもと約束していたとしても、流されたサンダルや帽子などを取ろうとしたり、魚に関心をとられたりすることもありえます。

 一歩踏み出したところで足を滑らせてバランスを崩せば、浅い場所でも溺れて流されてしまうかもしれません。

 気温がぐんぐん上がり、涼を求めたくなるこの季節。水面がキラキラしている川を見ると、「気持ちよさそうだなと思って、いつの間にか、安全への意識が薄まってしまうのかもしれません」

 そう話すのは岐阜県河川課の内田俊之さん(49)です。2020年、川の事故を防ぐための想定Q&A集を同僚たちと作りました(https://www.pref.gifu.lg.jp/page/27330.html別ウインドウで開きます)。

安全な川はありません

 60問あるQ&Aには、岐阜だけに限らず、各地の川で「ちょっとくらいなら大丈夫」と、つい楽観しがちな考えをゆさぶる内容が繰り返し登場します(一部抜粋)。

Q 河川で安全に泳げる場所はありますか?

A 河川は自然そのものであり、安全は一切保証されていません。

Q 多くの人がライフジャケットを着用せずに泳いでいる場所なら安全ですか?

A 「ライフジャケットを着用していないから安全」ということにはなりません。

大げさな話じゃない

 とはいえ、「ライフジャケットは大げさじゃないの?」と考えるかもしれません。Q&Aはさらに畳みかけます。

Q 浮輪ではだめですか?

A するりと脱げてしまうことがあるので、ライフジャケットの代わりになりません。

Q 川で少し子どもと水遊びするだけなのに、ライフジャケットは大げさではないですか?

A 毎年、全国の河川で痛ましい水難死亡事故が数多く発生しています。ライフジャケットを着用することは、最低限の水難事故リスク対策です。

 警察庁によると、2021年の水難事故で、中学生以下の子どもの死者・行方不明者は31人。

 場所別では、河川が18人で最多。湖沼池6人、海5人と続きます。過去5年で川がおよそ半数以上を占める状況は変わっていません。

もしサンダルが流されたら

 Q&Aはさらに「水遊びや泳ぐつもりはない」と思っていたとしても、「最悪の結果」になる可能性を指摘します。

Q お盆休みに家族みんなで河川敷でデイキャンプをする予定です。川で水遊びをする予定はありませんが、それでも、ライフジャケットは必要ですか?

A ライフジャケットが絶対に必要です。川を甘く見ると楽しかったはずのデイキャンプが最悪の結果となります。

 親子3世代を想定したこのQでは、「川で水遊びをする予定がなくても、お孫さんは『川に入ってみたい』と言い出すかもしれません。『かわいい孫の言うことだし、少しくらいなら大丈夫だろう』と川を甘く見ると重大な事故につながります」と注意を呼びかけます。

 そして、脱げたサンダルが流され、「追いかけた孫が流されてしまうかもしれない」、家族が助けようと「川に飛び込むかもしれない」、そして「(孫たちの)姿が川の中に消え、見えなくなるかもしれません」と続きます。

「最悪の結果」あえて書いた

 目を覆いたくなるような内容ですが、内田さんは「単にライフジャケットを着ましょう、では伝わりにくいかもしれないと思いました。目的は事故の予防。読んで記憶に残るように工夫しました」といいます。

 ライフジャケットは「『100%安全』ではありませんが、溺死(できし)リスクの低減になります」として、このQ&Aには179回も登場します(2022年6月24日時点)。

 内田さんは「スマホでスクロールして情報を見る時代。何度書いても、決して無駄じゃないと考えています。ライフジャケットの大事さがしっかり頭に定着しないと、気持ちよさそうな川の誘惑に負けてしまうのではと思います」と話します。滝沢卓