子どもに支援の輪、民間で限界に求める声も 三重

松原央、臼井昭仁
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 参院選では、主な各党が子育て、教育対策をそれぞれ打ち出している。さまざまな値上げが相次ぐ中、現場で子どもたちを支えている人たちの声を聞いた。

 「生活費だけで給料が消える。本当に助かります」。袋いっぱいのジャガイモや米、レトルト食品を両手に抱え、5歳の子どもと一緒に車へ戻った母親の表情は少しだけ緩んだ。

 今月18日、三重県鈴鹿市の近鉄白子駅前の公共施設、子育て応援館はぐはぐであった食料配布会。同市のNPO「シャイニング」が毎月1回実施している。配布されたのは全て地元の農家や企業からの寄付で、この日は母子家庭など、配達分も含め、約50世帯が食料を手にした。

 40代の母親は「もっと困った人もいるから、と(来るのは)遠慮していたけど、最近は本当に苦しくて頼らざるを得ない」とため息をついた。

 この施設で子ども食堂「りんごの家」を運営している同NPOは、コロナ禍に見舞われた2年前の4月から食料配布を始めた。同月、初めて緊急事態宣言が出され、「解雇され生活が苦しい」「食材をわけてほしい」との電話が100件以上寄せられたことがきっかけだった。

 同NPOの岡田聖子理事長は「物価高で『今はカレーは高級品』なんて声も聞こえる。その場限りではない、継続的な支援が必要な時期にきている」と話す。

 県社会福祉協議会の昨年の調査では、県内では118の団体が子ども食堂、フードパントリー(食品の無料配布)、体験教室などの活動をしていた。

 「子どもの貧困」が問題となる中、こういった活動への需要は高まっている。ただ同社協による調査に対し、各団体は、「後継者・新たなスタッフ募集」「活動資金の調達」などの課題を挙げている。岡田さんも、常設の活動拠点や倉庫がないことが悩みだといい、「(行政は)空き家などを提供するなど民間の取り組みを支えて欲しい」と話した。

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 伊勢市社会福祉協議会は、学習支援の教室「プラス」(毎週1回)で、授業を終えた子どもたちに弁当を渡している。通ってくるのは、生活保護の受給世帯、あるいは基準以下の所得で学用品などの一部を援助されている就学援助の受給世帯の小学4年~中学3年生だ。3カ所120人の定員は常にいっぱいで、半分は母子家庭。保護者は非正規雇用が目立つ。

 昨年、運営担当者の藤原真人さん(47)らは、教室に通い続けてもらうため、食事の提供もしようとクラウドファンディングも利用して寄付を呼び掛けた。計507万円を集めることができ、原資に充てている。藤原さんは「子どもこそ最大の資源。経済格差教育格差を生み、貧困の連鎖につながっていく現状は何とかしないといけない」と話す。

 市教育委員会によると、就学援助の受給世帯の占める割合は、市内の全小中学生1学年あたり13%。2008年度当時は8%だったが、コロナ禍もあって増えつつある。

 所得が低い家庭の子どもに対する教育支援を巡っては、伊勢市は16年度から無料で受講できる塾を4カ所に開設。今年6月からは対象の中学生で、塾に通う費用を助成する事業を始めた。助成額は年10万円か年6万円で、市が保護者に代わって学習塾へ支払う。現在、市内47の塾が登録しており、申請をした84人が通っている。市の単独事業で予算は1600万円。市子育て応援課によると、同様の制度は大阪市などが先行して採り入れているが、県内では伊勢市だけと、まだ少数派だという。

 藤原さんは「子どもへの支援は当然必要だが、何よりも国が主導し、保護者の所得向上や男女の賃金格差の是正といった問題にも取り組まないと解決できない」と話す。(松原央、臼井昭仁)