少なくなる沖縄戦体験者 新たな平和教育を模索

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沖縄タイムス
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[戦後77年]

 23日の慰霊の日を前に、県内の多くの小中高校で平和学習が行われた。専門家を招いてワークショップ沖縄戦を学んだり、地域の慰霊碑に足を運んで平和動画を制作したり。年齢の近い卒業生が講演した学校もあった。戦争体験者が少なくなる中、各校とも新たな平和教育を模索している。

南風原小学校 南部の犠牲者はなぜ多い? 証言から避難経路考察

 「なぜ南部地域の糸満や具志頭などで多くの住民が亡くなったか考えてみよう」。南風原小学校(與那嶺靖校長)では22日、琉球大学教育学部の北上田源准教授が5年生に沖縄戦の特設授業をした。地元の南風原町兼城住民の証言を手掛かりに、沖縄戦の終盤、南部地域で多くの住民が犠牲になった理由を考えた。

 児童たちは15日、沖縄戦序盤、終盤など時系列で地図を用意し、兼城の住民が亡くなった場所にシールを貼った。多くの住民が米軍から逃げる形で南に避難し、6月下旬に糸満や具志頭地域で犠牲者が増えたことを、地図を基に学んた。

 この日の授業では、それぞれグループごとに住民の証言を読み、壕の中に避難したら赤色の印を、壕以外は緑を地図に付けた。結果、多くの証言者が糸満地域では壕に入れなかったことが分かった。児童らは「兵隊が使っていて入れなかった」「住民がたくさん避難したから」とその理由も発表した。

 北上田准教授は「糸満は壕がたくさんあったが、日本軍が壕に立てこもり戦う『洞窟戦法』を取ったため、壕を使えない民間人が多かった」と説明。壕に避難できなかったエリアで、住民の犠牲が広がったことを児童たちが突き止めた。

 北上田准教授は「沖縄は市町村や字がまとめた住民の証言が多く残っている。証言は活用次第で(当時の)イメージを膨らませることができる」と話した。

 嘉手苅裕希さんは「自分でも、米軍を恐れて南に逃げると思う。慰霊の日は母と平和祈念公園に行く予定なので、亡くなった人の気持ちを考えて黙とうしたい」と話した。

浦添高校 当事者意識 卒業生が問題提起

 浦添高校(渡久山英雅校長)では21日、同校卒業生で平和教育などに取り組む仲本和(わたる)さん(22)が「戦争から“さらに”遠ざかった世代」と題して講演した。戦後77年がたち、今後の平和学習の在り方について「戦争の悲惨さを学ぶだけではなく、過去の教訓からどのように平和を維持していくかを考えることが大切ではないか」と問題提起。平和教育は主権者教育でもあるとし「その答えを実践する場が選挙だ」と述べた。

 仲本さんは沖縄戦の概要を説明した上で「戦争が終わったら沖縄は平和になったかと言えば、そうではない」と強調。本土の基地反対運動で沖縄に基地が集中した経緯に触れ「(米軍専用施設の)70%が集中する現状に違和感を覚えてほしい。基地問題はタブー視される難しさもあるが、触れないと現状は変えられなくなってしまう」と訴えた。

 沖縄戦の体験者から話を聞いたり証言集を読んだりしても、当時の状況をイメージしにくかった自身の経験を振り返り「77年前を学ぶことに加えて、今の沖縄の現状と照らし合わせて考えれば、難しくて遠い平和学習が身近に感じるのではないか」と述べた。

 その上で「『戦争は駄目』で終わらせるのではなく、どうすれば戦争を防げるか考えることが大切だ」と強調。ロシアのウクライナ侵攻にも触れ「自分たちが選んだ政治家が戦争を起こしたとき、自分たちは投票に行かなかったと後悔しないためにも、政治について考えてほしい」と呼びかけた。

城北中学校 地元の戦跡 動画で学ぶ

 那覇市の城北中学校(仲盛康治校長)は教職員や生徒会役員、地域の人が出演する平和学習動画を制作。22日の学習会で全生徒が視聴し、身近な地域の戦争について学んだ。

 動画は同校近くにある伊江御殿別邸内の第27戦車連隊の慰霊碑前で撮影した。生徒会副会長の上原七海さん(3年)が地元のボランティア団体「石嶺町北翔会」の金城真徳さん(80)、玉城俊光さん(74)をインタビューし、伊江御殿の歴史や首里石嶺町の戦争について学ぶ内容になっている。

 仲盛校長も出演した。生徒たちに興味を持ってもらおうと、人気タレントが歩きながら地域の歴史や暮らしに迫るテレビ番組に似せて編集した。

 動画では、金城さんが首里周辺の激しい戦闘の様子や碑の前で毎年、慰霊祭が開かれていることを説明。当時4歳で、戦後は食糧難で苦労した経験を話し「戦争はある日突然、起こるのではない。平和について学び、善悪が分かる大人になって」と力を込めた。

 学習会終了後、上原さんは「自分の住む地域だけに自分ごととしてリアルに感じた。私たち若い世代が継承していく責任感も生まれたので、これからも学んでいきたい」と意欲。ナレーションを務めた神里芽生果さん(3年)も「二度と同じ悲劇を繰り返さないためにも、私たちができることを考えていきたい」と力を込めた。(沖縄タイムス)

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