5年に1度、大豆畑を水田に戻す農家の苦渋 国の転作交付金見直しで

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井上潜
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 4月21日。昨年まで大豆が植えられていた秋田県三種町の畑を重機が動き回っていた。地面を掘り下げ、周囲を高くし、あぜを作っていく。5月に水田として田植えをするためだ。

 様子を見ていた及位(のぞき)公英さん(73)は嘆いた。「水稲と違って大豆は水を嫌う。来年ここを大豆に戻すときは平らにし、排水設備を作らないといけない。金がかかる。こんなことをしていたら会社はもたない」

 せっかくの大豆畑を、1年だけ水田にする。こんなおかしな事態が各地で相次いでいる。国がコメからの転作作物に出してきた「水田活用の直接支払(しはらい)交付金」を、「今後5年、1度も水張りをして水田として使わなければ交付しない」と決めたからだ。なぜこんな方針が打ち出されたのか。

 及位さんが頭を抱えるのは、「直接支払交付金」の「厳格化」だ。コメの転作作物として大豆や麦、飼料作物を栽培する農家には10アールあたり3万5千円が交付されていたが、今年度から5年で1度も水張り(水稲作付け)をしない農地には、2027年度以降は交付されないことになった。

 代々農家だった及位さんは昨年1月、農業法人「スカイブルー」を設立した。もともと農作業が困難になった他の高齢農家から農地を預かり、大豆を植えてきた。法人化前は約20ヘクタールだったが、受託する農地が増え続け、今では大豆畑は約130ヘクタールに。旧知の関恒雄さん(73)も経営に加わり、10人ほどを雇う。今回、大豆畑の一部を水田に作り直した。交付金を受け取るための苦渋の決断だった。

 大豆はコメと比べ収量が少なく、買い取り価格も安い。交付金がなければ経営は厳しい。「うちが農地を返すしかなくなったらどうなる。耕作放棄地が増えてしまう」と関さんは言う。

交付金はもともと、民主党政権時代に導入された事業の流れを引き継ぐものでした。記事の後半では、今回の事態を招いた「厳格化」の意図について、農林水産省に取材しました。

 三種町は秋田県内有数の大豆…

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