(魂の中小企業) 正直不動産、どこにある? 住宅診断の男の怒り

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 大阪市内の、あるご夫婦の家を訪ねました。きれいな3階建ての一軒家です。

 中に入り、リビングに通されました。

 40代の夫が、言いました。

 「わたしたちは8年前に、この家を建てました。数千万円しました。ついのすみかにしてもいいね、と話していたんです。ところが……」

 どうぞと促され、あとをついていきます。

 白い壁のあちこちに、黒いまだら模様が広がっています。

 「住みはじめて4年たった夏、階段の壁に小さな黒いカビのようなものができました。ぞうきんで拭いても拭いても、取れません。カビ取りも試してみましたが、ダメでした」

 雨漏りかもしれない。そう思ったご夫婦は、家の建築工事をした工務店に連絡、診てもらいました。診た時間は30分ぐらい、そして出た結論は、これです。

 エアコンの使用による夏型結露

 エアコンをつかっているから悪いんです、ご夫婦の生活スタイルに問題があるんです。そんな結論でした。

 そして、工務店は言ってきました。

 「カビの部分の取り換えなど、今回のみ、うちが費用をもちます」

 夫婦は、その話をうのみにしませんでした。原因を徹底的に調べて対応策を考えてほしいと依頼したのです。生活スタイルが悪い、というのは納得できません。

 それからは、工務店に問い合わせても、「調査中」の一点張り。そうしているうちにも、黒いカビが広がります。

 「工務店ではアカンので、売り主の不動産屋に相談しました。でも、ああだこうだ言うだけで、結局、状況は変わりませんでした」

 ご夫婦は、SNSで発信しました。どうしたらいいのか教えてほしい、と。

 いろいろなアドバイスが寄せられました。その中に、こんなアドバイスがあった。

 大阪に建組(たてぐみ)という会社があります。社長の福本さんに相談してみたら。

     ◇

 福本智、57歳。

 大阪は箕面市で、「建組」という会社をいとなむ。ホームインスペクション、つまり、住宅診断をしている。

 新築の住宅を建てたが、欠陥はないのか。

 中古住宅を買いたいのだけれど、修理が必要なのは、どこなのか。

 いま住んでいる住居は安心して住めるのか。不具合があるが、原因は何なのか。

 そういったことを診断している。

 福本は、大阪は八尾市の出身。会社員の家庭で育つ。

 クラシックが好きで、少年時代の夢は指揮者になること。音楽が盛んな高校に進み、1年生から1年間、ピアノを特訓。でも、そんな付け焼き刃なことをしてもダメだと思い知り、ショックを受ける。職員室の前に、米国留学のチラシがはってあった。

 〈アメリカか~、ええなあ〉

 米カリフォルニア州で1年間…

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