1人だけの部員、連合チーム結成に喜び 青森の板柳・田中優主将

渡部耕平
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 【青森】板柳の校舎は静かだ。県立高校の再編で今年度での閉校が決まっていて、在籍しているのは3年生の1クラス17人だけ。野球部員も1人しかいない。それでも、田中優(ゆう)主将(3年)はひたむきに練習に励んできた。「連合チームを組めるのがうれしいから」

 この夏は六戸、六ケ所、野辺地、浪岡、松風塾との6校による連合チームで出場する。そのなかで中軸の左打者。チャンスでの一打が期待されている。

 昨夏の大会後に3年生2人が引退し、唯一の部員になった。不安も少し感じたが、他校とチームになれる喜びのほうが大きかった。

 昨秋の県大会では、五所川原商、黒石、松風塾、浪岡との5校で連合した。チームワークを高めようと、連合チームの主将に立候補するほど意欲を見せた。「守備でも攻撃でも、みんなで声をかけ合う。1人でいるのと違って、励まされて居心地がいいんです」

 秋は初戦で3―10のコールド負け。この春は今の6校の連合チームで挑んだが、地区予選の1回戦で2―12のコールドで敗れた。夏こそ一矢報いたいと、仲間のために磨いてきたのが打撃だった。工藤達哉監督からマンツーマンの指導を受け、しなやかな打法を身につけてきた。

 コツは、あせらずに好球を待つこと。バットは軽く握り、打つ瞬間にだけ力を込める。手ごたえをつかんだのは、6月の練習試合。左中間にライナーで流し打ち、二塁打を放った。「芯でとらえて、さらにボールを押し込む感覚でした」

 読みもさえていた。投手は変化球のコントロールに苦しんでいたから、直球でストライクを取りにくる。そう考え、狙い打った。

 工藤監督は、精神的な成長にも目を見張る。「もともとは人見知りでしたが、チームの輪の中に積極的に入っていった。仲間を引っ張っていく気持ちが強く出てきたのです」

 連合チームは六戸町での練習が多い。板柳町から約100キロ。連合を組む前の4月、工藤監督は遠距離の移動による疲れを心配した。だが、田中主将は懇願した。「遠くても、連合チームで頑張りたい。最後まで野球をやり切りたいです」。熱い思いが、6校によるチームづくりにつながった。

 「みんなと最後まで楽しくプレーしたい。自分の役割はランナーをかえすこと。全打席でヒットを打ちたい。自信、あります」(渡部耕平)

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