病気や障害がある家族の介護や家事など、大人が担う役割を日常的にしている子どもがいます。「ヤングケアラー」と呼ばれる存在です。行政も実態把握に乗り出していますが、周囲の人ができることはあるのでしょうか。淑徳大コミュニティ政策学部3年の串惣一朗さん(20)=写真=といっしょに経験者に会って、考えました。(田中久稔)
柏市郊外にあるカフェ「ケアラーズ&オレンジカフェ みちくさ亭」で、布川潤さん(26)が迎えてくれた。かつて自身がヤングケアラーといえる経験をしたという。人前で話すのは初めてとのことで、お互い少し緊張しながら会話が始まった。
中学まで、家族で東京都府中市に住んでいた。小学3年の頃、母親が柏に住む祖母の介護に通い始めた。しばらくして、母親と会わない日が続き、どうしたのかなと思っていると、父親から「入院している」と聞かされた。介護をきっかけにうつ病になっていた。「えっ、なんで、と思いました」。
千葉県内の入院先に見舞いに行った。母親は何かにつかまらないと立てないほど衰弱していた。母親は退院して祖母の家で暮らし始めたが、症状は安定せず、入退院を繰り返した。
「1人でどうしよう、どうしようと考えて。自分がどうにかしなきゃ、と」。週末ごとに電車で2時間かけ、母親の元に通うのが潤さんの役目になった。学校の様子を話したり、庭先の菜園を一緒に手入れしたりして、寄り添った。「ただ、そばにいました。それで母親は笑顔になった」。家に閉じこもるのは良くないと考え、一緒に外食もしたが、外へ連れ出すことに無我夢中で、何を食べたか覚えていない。
映像関係の仕事をしていた父親は、仕事と家事で身動きが取れなかったという。口数が減り、背中が丸く、小さくなったように見えた。子ども心に「家族が崩壊する」と恐れたが、明るく振る舞った。「自分が泣いたら家族が悲しむ。笑っていないといけないと思ったんです」
■「母親がうつ病」になったと…
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