第6回ダンス界のハラスメント、密室の指導の危うさ 唐津絵理さんの提言

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聞き手・弓長理佳、増田愛子
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 映画界での告発を発端に、性暴力やハラスメントをなくそうという声が文化芸術の各分野に広がっています。ダンサーとしてキャリアを始めてダンス公演の企画・製作に30年近く携わり、現在は愛知県芸術劇場のエグゼクティブプロデューサーを務める舞台芸術プロデューサーの唐津絵理さんは、ダンスの世界にも根深い問題があると指摘します。ダンス界の構造とその課題、変革に向けた取り組みについて聞きました。

からつ・えり

熊本市出身。ダンサーとしての舞台活動を経て、1993年から、愛知芸術文化センターに日本初の舞踊学芸員として勤務。現在は愛知県芸術劇場エグゼクティブプロデューサー。コンテンポラリーダンスの分野で創作や人材育成に取り組む、横浜市内の民間スペース「Dance Base Yokohama(DaBY)」では、ボランティアでアーティスティックディレクターを務める。

「厳しい指導」責めるのは自分

 ――長年プロデューサーとして働く中で、ダンサーから悩みを聞くことも多かったのでしょうか

 「たくさんのダンサーからの相談を受けてきました。例えば、バレエ団やカンパニーの指導者やディレクターから、人格を否定するような言葉を言われたり、他のダンサーたちの前で繰り返し同じことをするように要求されたり。反対に、徹底して無視され続けてきた人もいました。精神的に追い詰められ退団した人、ダンスそのものをやめてしまった人もいます」

 「でも、ほとんどの人は相手を恨むことはなく、『自分が下手だから怒られている』『我慢できなかった自分が悪い』と言います。でも、よく聞くと『あなたは悪くない』と言ってあげたくなる話ばかりでした」

 ――「おかしい」と思っても、声を上げにくい状況なのでしょうか

 「話をすることで自分のキャリアに響くのではないか、あるいは、誰かに迷惑がかかったりするのではないかと、モヤモヤしたまま、つらい思いで、ダンスをやめてしまった人も、本当にたくさんいました。相手に対する憧れや、その人がつくる作品への尊敬からカンパニーに所属した経緯がある場合、沈黙するしかないと考える人もいると思います」

 ――なぜ、自分のせいにしてしまうのでしょう

 「一つは、ダンスを始める時期が大きく影響していると思います。例えば、日本でバレエはお稽古ごととして盛んです。憧れや、純粋に踊りが好きといった気持ちから、人格形成期前の、幼い頃に始めます。指導者と長く一緒にいるため、家族的な関係になりやすい。恋愛関係になる場合もあります。どこまでが指導で、どこからが行きすぎたハラスメント行為なのか、誰も線引きが出来ない状況が生まれていると思います」

 ――保護者が問題視することはないのでしょうか

 「『厳しい』指導の結果、子供が上手になったと感謝するかもしれません。上手になるためには、怒られても厳しい練習を繰り返さなくてはいけない……という日本的な根性論はダンスの世界にも存在します」

身体の密着も表現の一部

 ―一般的には、他人が稽古の様子をチェックすることもありませんね

 「それも問題の一つです。クローズド(閉鎖的)な環境で行われているということですよね。外の目に触れないため、『おかしい』と指摘する人がいません。その環境にいる限りは、自分のされていることを肯定するしかなくなってしまいます」

 ――ダンスの場合、身体的な接触も避けられません

 「身体で表現する芸術ですか…

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