香港から第2の移民ラッシュ 英国へ11万人、返還時を上回るペース

香港=奥寺淳
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 7月1日に英国から中国への返還25周年を迎える香港が、「第2の移民ラッシュ」を迎えている。その最大の目的地は、「中国政府が約束した高度な自治を壊した」として移民を受け入れる英国。昨年1月末からの14カ月間で11万人以上に特別ビザが発給された。25年前の返還時を上回るペースで移民が進んでいる。

 英国政府によると、香港人向けの特別ビザ発給を始めた昨年1月31日以降、今年3月末までに受け付けた申請は約12万3400件。このうち、11万3672件がすでに許可された。

 英国政府は、特別ビザ発給後の5年間で、25万~32万人が移民してくるとも予想している。

 英国移民コンサルティング会社「英倫移民」によると、移民を決める最大の理由は、「子供の教育のため」だという。香港では、2020年6月に反中国的な動きを取り締まる香港国家安全維持法国安法)が施行され、学校教育でも中国の良い面ばかりを教える傾向が強まった。

 さらに、当局による民主派やメディアの弾圧が相次いだことも、香港人の移民を加速させている。

 国安法の施行後に移民受け入れを増やしたのは英国だけではない。カナダ政府も香港人の人権を守るため、昨年2月からカナダの大学などで学んだ人の家族も受け入れ、労働ビザも出す制度を始めた。最初の1年で約8500人に対して許可を出した。

 オーストラリアによる移民ビザ発給も、20~21年度は4312人と前期の3倍に急増。オーストラリアへの移民コンサルティング会社ロイ・ホワイトの黎美紅・移民部総監は「今年に入っても、オーストラリアへの移民の問い合わせは確実に増えている」と話す。

 英国、カナダ、オーストラリアの3カ国だけでも、国安法施行後に少なくとも約12万6千人の香港人に移民の許可を出した。台湾やシンガポールに移民する人も少なくない。すでに外国籍をもっている香港人も含めれば、香港を離れた人数はさらに多いとみられる。

 最初の移民ラッシュは、香港が中国に返還される1997年までの間だった。それまで毎年数万人ずつ流出し、約10年間で計50万人が移民したとされる。今回の移民ラッシュでは、最初の1年をみると、返還時を上回るペースといえる。人口約740万人の香港にとって、大きな人口流出となる。(香港=奥寺淳