過疎の町を揺るがす巨額着服騒動 「アイドル好き」職員の驚きの手口
「やりました。1億5千万円ぐらい」――。38歳の男性職員の告白に、三重県南部の熊野灘に面した人口1万1千人余の過疎の町が揺れている。町の聞き取りに対し勤務先の町立病院で公金を着服したと認め、「アイドルのグッズの購入に充てた」などと説明しているというのだ。町は刑事告訴する方針で、騒動はしばらく続きそうだ。
「びっくりっていうか、よもや、です」。南伊勢町中心部から離れた高台に立つ町立南伊勢病院(7科、病床50)。勤務する医療関係者は驚きを隠さない。3階の一角に問題の職員=主査、6月28日付で懲戒免職=が働いていた総務事務室がある。郵便物の投函(とうかん)依頼などで訪れ、面識はあった。「おとなしそうな印象」の職員と、引き起こしたとされる問題との落差が大きすぎていまだに信じられない思いだという。
病院でも役場でも
6月21日、上村久仁町長も出席して開かれた会見によると、職員は2019年4月、町役場の上下水道課から同病院へ会計担当として出向。ほどなく病院での公金の着服を始めた。今年5月まで続き、申告によると、その額は1億5千万円にのぼる。
その前の17、18年度に勤務していた上下水道課でも着服をしたといい、その額は500万円と申告した。
町の調査によると、病院での不正経理の手口は二つ。
①患者から支払われた診療費は翌日、まとめて町内にある金融機関の支店で入金するが、この職員はマイカーで行き、その際、金の一部を抜き取った②病院で管理している口座から、通帳を使って無断で引き出した。1回あたり10万~80万円。
会計担当はこの職員1人だけ。帳簿の数字も偽造していた。毎月ある監査では、金融機関が出す残高証明書と突き合わせるが、そもそも帳簿の合計残高の数字は偽造して帳尻合わせをしていたので、見逃されていたという。
上下水道課での着服の手口はこうだ。
まず日付の入っていない業者からの請求書を改ざんした。工事や修理が終わっている過去の事業の支出決議書を引っ張り出し、添付された請求書をはがし、改ざんした請求書を貼り付けた。出来上がった架空の支出決議書で役場から出金させ、着服した。1件あたり数十万円。
「朴訥(ぼくとつ)とした感じ」「地味で目立たないタイプ」「口数は少なめ」……。専門学校を卒業して04年に旧南勢町役場に入ったこの職員を知る町民や役場の同僚たちはそう語る。仕事ぶりについては「まじめ」と悪くない。
70代の役場の元上司は言う。
「上下水道課は、急な出動も…
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