たった1人で2年間、部を守ったマネジャー やっと憧れの高校野球に

北上田剛
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 男鹿海洋高校(秋田県男鹿市)のグラウンド。2人の1年生がキャッチボールする様子を、ベンチでマネジャーの加藤菜瑠さん(3年)が見守っていた。2人が春に入部するまで、野球部は加藤さんだけ。たった1人で部を守ってきた。

 三つ上の兄の影響で、ずっと野球が好きだった。高校では野球部のマネジャーになろうと決めていた。

 2年前の春。入学した男鹿海洋の野球部は3年生の選手1人だけ。その先輩は毎日、教室まで「部活いこう」と迎えに来てくれた。

 選手1人でも、ノックの手伝いをするのが楽しかった。グラウンドにいると、ほかの部活が活動する声も聞こえてくる。「私も熱中できることができて良かった」とうれしくなった。

 その夏、連合チームが負けて先輩は引退。

 最後に手渡された「部に入ってくれてありがとう。練習でも良い結果が出せた」と書かれた手紙は、いまも大事にしまってある。

 先輩が抜けて、加藤さんだけの野球部になった。

 それでも毎日、グラウンドに来た。最初は自分がノックを受けたり、外野を走ったり。

 そのうち、グラウンドの石拾いや草取りが中心の練習になった。

 「絶対に誰か入ってきてくれると思っていたから。根拠はないけど、その日のために」。心配した監督が声をかけても「部活は辞めません」と答えた。

 野球をしていた同級生数人にも声をかけたけど、「選手がいないから」と断られた。2年生の4月。新入生を前に体育館で、ほかの部と並んで部活の紹介をした。「監督と部長と私の3人で活動しています」。部室で待っていても、その年は誰も来なかった。

 監督と連日、グラウンド整備をして迎えた今年4月。

 体育館での部活紹介を終え、いつものように石拾いをしていたら、藤嶋優太君(1年)が現れた。「野球部に入りたいんですけど」

 驚いて泣きそうになっていたら、藤嶋君は「もう1人来ます」。「え? もう1人来るの?」。数日後、畠山海斗君(1年)も加わった。2人とも野球経験者だ。

 練習用のコーンを並べたり、ノックの球拾いをしたり。「ずっと憧れていた高校野球だ」と思う。1年半、ほとんど使わなかったグラウンドだけど、加藤さんが整備していたからすぐに練習することができた。

 でも、一緒に部活ができるのは、たった4カ月ほど。「2人があと1年早く来てくれてたら、っていつも考えます」

 昨年は選手がいなくて参加できなかった夏の秋田大会に、今年は4校の連合チームとして出場する。「試合に出て、ユニホームを泥だらけにして笑っている2人が見たい」とほほえんだ。(北上田剛)