「道路整備だけじゃだめ」児童死傷事故から1年、前PTA会長の思い

伊藤繭莉
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 千葉県八街市で下校中の市立朝陽小学校の児童が飲酒運転のトラックにはねられ、5人が死傷した事故から1年が経った。この痛ましい事故発生後も県内では飲酒運転による人身事故が後を絶たない。同小前PTA会長で事故対応にも当たった浜詰大介さん(46)が取材に応じ、飲酒運転根絶への思いを語った。

 浜詰さんは2013年度から6年間、同小PTA会長を務め、19年度から同小と通学範囲が同じ市立八街北中PTA会長に就任している。県PTA連絡協議会会長も兼務し、事故後の制定された県飲酒運転根絶条例に基づく連絡協議会の委員としても飲酒運転防止に取り組む。

 これまで被害児童やその家族、周辺住民らに配慮し、自動車運転死傷処罰法の危険運転致死傷罪に問われた梅沢洋受刑者(61)の裁判が今年3月に終了するまで取材を断ってきた。

 「事故直後の悲惨な現場を見てショックを受けた住民もいた。地域全体が暗くなっていた」と語る。

 事故を知ったのは昨年6月28日夕。知人からの電話だった。現場は見通しのよい直線道路。幅は約6・9メートルで歩道やガードレール、速度規制の標識も無い市道で、同小PTAが08~11年度、歩道やガードレールを設置するように市に要請していた。市は用地買収などで多額の費用がかかるとPTA側に回答したという。PTA側はその後も周辺一帯で対策を講じるように求めてきた。

 事故後、浜詰さんは小学校に登校して情報収集にあたり、保護者説明会にも同席した。また朝陽小PTAとともに保護者を対象に通学路の危険箇所の緊急アンケートを実施。結果に基づき市に道路整備を求める要望書を提出した。市議会に対しても、市PTA連絡協議会が道路整備を請願した。交通安全を啓発する上り旗を市内全小中学校や公共施設、事故現場に設置してきた。

 活動を通じ常に意識してきたのは地域住民への心配りだった。事故のショックや16年にもあった同小の児童の列にトラックが突っ込み、4人がけがを負う事故を思い出し、登校できない児童もいた。「事故を風化させたくないが、『交通安全』と声高に言うと、地域の人が事故を思い出し足踏みしてしまう。バランスがすごく難しかった」と振り返る。

 事故後、市などは事故現場にガードパイプや速度抑制を促すハンプなどを整備した。事故を受けた緊急点検で、県全体では3月末現在、危険箇所と判断した約3500カ所(千葉市以外)のうち7割で同様の対策が進む。

 しかし浜詰さんは「道路を整備しても、飲酒運転であれば被害を防ぐのは難しい」と指摘する。

 県警によると、飲酒運転による人身事故は1月~5月末現在で48件(前年同期比7件増)発生し、5人(同4人増)が死亡し、64人(同16人増)がけがを負った。飲酒運転のドライバーは「事故を起こさなければ大丈夫だと思った」「時間が経過したのでアルコールは抜けたと思った」などと弁解したという。

 浜詰さんは「取り締まりの強化や厳罰化も抑止になるが、飲酒運転はダメだと時間をかけて声を上げ続けるしかない」と訴えている。(伊藤繭莉)