日韓首脳、巧みに使う「立ち話」 米国とは10分でも「会談」なのに

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野平悠一
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 スペインで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に先立ち、28日夜(日本時間29日未明)、岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が短時間「立ち話」した。歴史問題が影を落とし、関係が悪化している日韓両国。首脳同士のやりとりには国内の世論も敏感に反応しがちなことから、両国はこれまでも接触の仕方に細心の注意を払ってきた。日本政府が巧みに使ってきたのが「立ち話」だ。

 「立ち話」があったのは、開幕前夜に開かれたスペイン国王主催の晩餐(ばんさん)会の会場。韓国大統領府によると、岸田氏が尹氏に話しかけ、6月1日に投開票された韓国統一地方選の与党勝利を祝った。尹氏は「岸田首相も参院選で良い結果が出ることを願っている」と述べ、「私たちは参院選が終わった後、韓日間の懸案を早急に解決し、未来志向的に進む考えを持っている」と伝達。岸田氏は「日韓関係がより健全な関係に発展できるように努力しよう」と応じたという。時間にして3、4分だった。

 首脳同士が会談する場合、日本では首相官邸や迎賓館、外国で言えば大統領府などで、互いにひざをつき合わせて十分な時間をとって話し合うのが一般的だ。国際会議などで行う会談でも、会場には会談用の部屋が設けられ、出席者のネームプレートや両国の国旗などもあらかじめ用意されている。

「立ち話」も事前に調整するケースあり

 一方、「立ち話」は形式も簡素化されており、今回のように国際会議などの合間の時間を利用した短時間の懇談になるケースが多い。立ち話とはいえ、立ったまま話す場合もあれば、互いに椅子に腰掛けることもある。

 会談と立ち話に定義はないため、その境目はあいまいだ。立ち話も事前に外交当局間で何をやりとりするかを調整した上で実施するケースもある。

 では、どう使い分けているのか。背景には、両国の距離感が呼び名の使い分けに影響している。

 岸田首相は27日、ドイツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)の合間で、バイデン米大統領とソファに座って約10分間意見を交わした。日本政府はわざわざ「日米首脳会談」と発表した。会談とした理由について、外務省関係者は「首相官邸の判断」と話す。

 今回、日本政府関係者は日韓首脳会談の可能性にも言及していたが、結局は「立ち話」に落ち着いた。

 韓国による5月の島根県竹島(韓国名・独島)周辺での海洋調査の実施に対する国内世論の反発が高まっていたことや、最大の懸案となっている元徴用工問題で進展が見込めないことが理由だった。会談をしたとなれば、参院選を前に保守派を中心に国内の批判を浴びる可能性があるとの判断だった。

安倍首相、朴大統領の初接触も「立ち話」

 一方、初めて顔を合わせる日韓首脳が一つの会議場に丸一日いるのに、一切の接触がないのは不自然だ。さらに米国は日韓両政府に関係改善を強く求めていた。米国の手前、何も言葉も交わさないというわけにはいかない。こうしたことから苦肉の策として、短時間の接触で韓国統一地方選の与党勝利を祝うなどの「立ち話」を選んだのだった。

 こうした間の取り方は、今回…

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    前田直人
    (朝日新聞コンテンツ戦略ディレクター)
    2022年6月29日19時44分 投稿
    【視点】

    外交は、自国と他国のナショナリズムに政治指導者がどう向き合うかという問題が常につきまといます。特に「近くて遠い国」になって久しい日韓関係はデリケートです。「立ち話」にしても「会談」にしても、思いつきでなんとなくそう呼んでいるのではなく、対話