「仕事も家族も失った」 雇用調整助成金を不正受給した元社長の告白

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伊藤隆太郎
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 新型コロナ対策の補助金で、不正受給の発覚が相次いでいる。

 6月も、総額10億円近くの持続化給付金の不正受給にかかわったとして、インドネシアから身柄を引き渡された男が詐欺の疑いで逮捕された。逮捕者は弁護士や国税局職員にも及ぶ。

 そうしたなか、休業手当などを助成する雇用調整助成金(雇調金)などを不正受給したとして逮捕され、執行猶予つきの有罪判決が確定した元社長の男性(30)が、朝日新聞のインタビューに応じた。

 仕事も家族も失ったという男性は、何を語ったのか。

1千万円以上受け取った

 ――どういう経緯で不正をした?

 学生時代の友人から誘われた。「雇用調整助成金は簡単に請求できる」「いくつもの請求を手助けしている」と。

 コロナ禍で仕事が減り、持続化給付金も受けていたので、同じようなものだろうと考えていた。営業担当の取締役に話したら、「手続きをしたい」と乗り気だった。

 ――どんな仕事をしていた?

 業種は明かせないが、たとえば水道修理や印鑑販売に同業者の全国規模のグループがあるように、自分も同業者の全国グループに属し、顧客の注文を融通しあうなどしていた。

 コロナ禍前までは順調だったので、自分の事業所の下にグループの支部までつくっていた。

 しかし、仕事が減ってきた。融通される仕事は支部に回し、自分がとりしきる事業所は休業すれば助成金が得られるので、一石二鳥だと安易に考えてしまった。2020年9月からの半年分の雇調金などを請求し、受け取った金額は1千万円以上になる。

 ――実際に休業はしていた?

 そこは警察とも争ったし、裁判でも主張した。いつ仕事が来るか分からない業種なので、社員の勤務表はつくっていた。もし急に仕事が入れば、断るわけにはいかないから。

 だが、仕事はほとんど来ないし、すでに依頼されていた分は支部に回していたから、事業所は本当にほぼ休業だった。ただ、勤務表上は出勤日になっていたので、「実際は仕事をしていた」と追及され、不正とみなされた。

「生活が破壊された」

 ――ほかにも、雇っていない者を雇用したと装った、とされたが。

 そこも言い分はある。コロナ禍前からアルバイトや友人に仕事をしてもらっていた。口約束で正式な雇用関係は結んでいなかったが、自分としては社員という認識だった。

 しかし、警察や労働局からは「従業員とはいえない」といわれ、不正とされた。争いたかったが、弁護士にも「執行猶予がつくなら認めて、早く再出発しましょう」と助言され、不本意だが最終的には罪を認めた。

 いまでも納得していない。雇…

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