腹が「きやきや」、頭が「うずく」 その痛み、どんな意味?
ふだんの暮らしのなかで「体の痛み」はとても気になります。けがの痛み、病気の痛み、慢性的な痛み。様々な種類がある痛みをみなさんはどう表していますか? そうした表現方法を研究する竹田晃子・岩手大准教授に聞きました。
リレーおぴにおん 「痛みはどこから」
たけだ・こうこ
1968年生まれ。日本語の方言の文法やオノマトペを研究。国立国語研究所、立命館大学の研究員などを経て2022年から現職。
体のどこかが痛いとき、単に「痛い」と言うと漠然としていて、痛みの強さや質が伝わりにくい。そこで私たちは「ズキズキ」「ジンジン」といったオノマトペを使います。
オノマトペは擬音語や擬態語の総称で、私の研究分野の一つです。これを使うことで痛みを適切に表現したり、感覚的に伝えたりできると感じている人は多いようです。
痛みのオノマトペにはどれくらいの種類があるのでしょうか。慢性的な痛みがある人を対象とした調査では、60種類以上があり、疾患によって使いわけられる表現に傾向があることがわかりました。
表現は60種類以上
例えば、座骨神経痛などの神経痛は「ジーン」や「ビリビリ」といった表現がよく使われていました。オノマトペはその音と特定のイメージが結びつく性質を持っています。「ビ」は「まわりに広がる」。語末の「リ」は「流れるような動き」。「ビリ」の反復には「繰り返される」イメージがあります。
対して、関節痛だと「ギシギシ」「ゴリゴリ」など、円滑さが失われているような表現も多い。「ズキズキ」「ズキンズキン」はどの疾患でも多く使われます。
医療現場では、患者の痛みの表現は適切な治療をする手がかりになります。一方、患者が受診時にオノマトペを使うことを遠慮してしまうケースもあるようです。医師が積極的にオノマトペを使って会話を進めた場合、患者もオノマトペを使って気軽に体調を説明できるような状況になったという調査結果もあります。
多くの種類がある痛みのオノマトペ。みなさん、ここまで出てきた表現は使ったり、聞いたりしたことがあったのではないでしょうか。実は痛みのオノマトペには方言もあります。記事後半では竹田さんがその表現や地域差を解説してくれます。
「はかはか」「きやきや」 わかりますか?
実は痛みのオノマトペにも方…
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- 【視点】
「それは大した痛みじゃないね」 大学院生の時に生理痛がひどい私を心配した親に連れられて病院で検査を受けたことがあるのですが、痛みの程度を一生懸命説明したら、医者(男性)に言われた言葉です。このとき、もう少しで「お前に何が分かる」と医者に詰