ロシアによるウクライナ侵攻をうけ、長年中立を掲げてきたフィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)に加盟することになりました。侵攻前には想像できなかった動きです。軌を一にして、デンマークも欧州連合(EU)の共通防衛政策に参加するという決断をしました。欧州の安全保障環境は劇的に変わりました。ロシアとの向き合い方は今後どうなるのか。NATOの日本における窓口役を務めるデンマークのピーター・タクソ-イェンセン駐日大使に聞きました。
――共通防衛政策などが含まれていたマーストリヒト条約を1992年にはいったん拒否したデンマークが、なぜ今参加を決めたのでしょうか?
我々デンマーク人は共通通貨ユーロなど、欧州における協調に対して常に少しひき気味のところがありました。そのため、適用除外ということが認められ、参加してこなかったのです。
ただ、そんな中で(ロシアがウクライナ侵攻に侵攻した)2月24日が来ました。それは欧州全体の安全保障秩序に向けた攻撃だったのです。この日を境に、欧州の政治家たちの考え方は大きな変化を迫られました。それは防衛費をGDP比で2%に上げることを決めたドイツだけでなく、デンマークも例外ではありませんでした。
少数与党であるデンマークの政府が共通防衛政策への参加という政策転換に踏み切ったのは、ロシアからの新たな脅威に対処するためでした。国民の理解も得て、今年6月1日に実施された国民投票でも賛成が過半数を占めました。
――デンマークはNATOの原加盟国です。なぜEUの枠組みに新たに参加する必要があったのでしょうか?
EUは経済と政治・外交政策、…