美術館とは違う芸術祭 初代「あいちトリエンナーレ」監督が語る意義

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聞き手・山下寛久 柏樹利弘
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 「あいちトリエンナーレ」を引き継ぐ国内最大規模の国際芸術祭「あいち2022」が7月30日、愛知県内4エリアで開幕した。

 時に社会との摩擦を生む現代アート。それらを集め、国際芸術祭を開催する意義はどこにあるのか。2010年の最初の「あいちトリエンナーレ」の芸術監督で、今回もアドバイザー会議委員を務める建畠晢(あきら)・多摩美術大学長に聞いた。

 ――国際芸術祭の役割とは。

 「カッティング・エッジだ。時代の文化芸術の最も先端で生々しい断面を切り落とすことだ。作品を選ぶ人の思想が反映され、賛否両論があることも許される。新しい価値を切り開くような、大胆な実験も歓迎されるべきだ。芸術作品の価値形成を担い、標準をつくるという使命を持つ美術館とは違う」

「逃げないで考える」

 ――3年前は企画展「表現の不自由展・その後」の展示が抗議を受けました。

 「表現への抑圧は常にある。どんな表現ができて、どんな表現が許されないのか。逃げないで正面から考えようということではなかったか」

 「しかし、抗議に突き当たった時の戦略が練られていなかった。表現の許容範囲が大きく後退する可能性すらあった。特定の政治、宗教に関する表現には極めて慎重でなければならない。性も含めこれらの表現がある作品や、強い意見を含む作品の展示は摩擦を生むと想定することも必要。観覧者に事前に表現内容を知らせるのも一つの手だ」

 ――税金の使い道として不適切との声については。

 「多様性のある社会を目指す…

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