野球人口減っているのに…公立高で野球部員99人 愛知・岡崎工科

土井良典
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 男子生徒696人のうち1割強が野球部員という公立高校が愛知県岡崎市にある。工業系の人材を育てる岡崎工科。公立なのに部員は99人と大台の100人に迫る。少子化や野球人口の減少が続くなか、部員が集まるのはなぜだろう。

 「名前を覚えるのが大変ですね」。マネジャーの小城歌さん(3年)は黒板に書かれた選手の名前を見ながら苦笑した。練習内容を割り振るために作った選手名のマグネットも、数え切れないほどある。

 部員は現在、3年28人、2年35人、1年は33人でマネジャーが3人。朝日新聞社が県内各校の部員数を集計すると、公立最多は岡崎工科で2位の大府(62人)を大きく引き離している。

 左翼91メートル、右翼は100メートル以上もある立派なグラウンドは野球専用で、公立でよくあるサッカーや陸上など他部との共用ではない。

 「練習のローテーションを組むのが大変ですね」と平松忠親監督(47)は言う。3年前の就任時は部員は47人。それが今や倍増だ。

 「下級生だから」と走らせるだけのような練習はさせない。1~3年生に同じようにプレーする機会を設けている。そのため、グラウンドではきびきびと移動することが最も大切だ。「止まっている時間を作らない」。これが「チームの合言葉」と笑う。

 だが、部員が多いことのメリットはある。コロナ禍で対外試合が組めないと嘆くチームは多い。岡崎工科では部内だけで4チームを作り、紅白試合で実戦の経験を多く積んだ。生きた打球をさばいたり、走塁を磨いたり、サインプレーを確認したりすることができた。

ものづくりも野球も盛んな地域にある学校

 なぜ、公立なのにここまで人が集まるのか。

 複数の保護者に理由を聞くと、コロナ禍で開かれた2年前の独自大会を挙げた。この大会でベスト4に進出したことで注目され、新入部員が急増した。野球部専用グラウンドの存在も、同校野球部を志望する強い動機になっているという。

 ものづくりが盛んな愛知県らしい理由もあった。工業系の同校がある三河地方は自動車工場などが多い一方、野球熱も高い。

 同校によると、生徒1人あたりの求人数は平均8・8社(2021年実績)。トヨタの系列などに加え、鉄道関係からも話がある。平松監督は「警察や消防なども含めて進路の選択肢を広げるようにしている」。

 高校卒業後は地元で就職するという将来が描けている。なので、卒業までは野球に打ち込み、完全燃焼できる環境が整っているということだろうか。

激しいレギュラー争いを覚悟で入部

 夏の目標はまずベスト16だ。今年は「打撃のチーム」という。そつのない走塁を磨き、着実に得点につなげる練習を重ねている。

 「人数が多いと、どうしても群れるというか。あと周りのムードに流されちゃうので、全体を引き締めるようにしています」

 エースでもある平岩幸樹主将(3年)はそう話す。

 人数が多いと一体感を保つことが課題になる。LINEでポジションごとにグループを設け、練習時間やその内容、試合の反省などをする。部員それぞれがつける野球ノートもその一環だ。

 副主将の本沢泰亮選手(3年)は「人数が多いのでレギュラー争いは激しい。でもそれを覚悟して集まっている選手もいるので意識は高い」。父親は私立の享栄(愛知)の選手として甲子園に出場。自らは公立で夢舞台に立ちたいと岡崎工科の門をたたいた。

 平松監督は「夏の背番号をみんなに渡せないのはつらいです」。愛知大会のベンチ入りは20人まで。最後の「20番」をつける選手だけは、監督ではなく、3年生全員の投票で選んだ。部員99人が心を一つにして3日の初戦に挑む。(土井良典)