24円のモヤシ、244円の鶏肉、58円の納豆……。6月のある日の夕方、仕事帰りに東京都西部の駅の近くのスーパーに立ち寄った30代の女性は、食材をかごに入れていった。「よっぽどおなかがすいていなければ、値下げのシールが貼ってあるもの以外は我慢するようにします」
帰宅し、生活に困っている人を対象にした相談会でもらったレトルトの炊き込みごはんに、実家から送られてきたシャケのフレークを散らす。冷凍してあったタケノコと鶏肉の炒め物をレンジで温め、手早く夕食を準備した。
「タケノコも相談会でいただいたんですが、味付けに失敗してしまって。一度にたくさんは食べられないので、冷凍して少しずつ食べています」。そう言って苦笑いした。
困窮する食卓
止まらない格差拡大に、コロナ禍と物価高が追い打ちをかけている。「食べるものがない」「食事を減らしている」。参院選で経済対策が争点となる中、生活に苦しむ人々の「食」の現場から、日本の貧困の現実を見つめた。
食卓には、支援物資としてもらったレトルト食品や缶詰などが並ぶことが多いという。「自炊は月に1、2度くらい」。手軽に腹を満たすため、ポテトチップスやチョコレートなどのお菓子を食べて済ませることも多かったが、健康も考えて最近は控えている。
女性は現在、地元の小学校で非常勤講師を務める一方、有償ボランティアの支援員として子どもたちの学習をサポートしている。お昼に給食を食べる出勤日は元気が出て、体が動く気がする。「食事の質が、体や思考の質を作ると感じる」。そう分かっていても、我慢することが少なくない。
講師の給与は月2万円弱。支援員の報酬の支払いは滞りがちだ。地元の社会福祉協議会から借りている月15万円の新型コロナ対策の支援金が頼みの綱だ。学校が夏休みに入ると、講師の給与はゼロになる。「仕事を探しているんですが、続けられる自信がなくて」
それには理由がある…
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