「カッパのミイラ」公民館の金庫から現れた 謎の祭りを追いかけて

有料記事

久保田一道
[PR]

 スマートフォンのツイッター検索に出てきた言葉に手が止まった。

 「佐野子(さのこ)かっぱ祭り」。おはやしに合わせて、風変わりな振り付けを踊る人々の動画もある。

 さらに、投稿につけられたハッシュタグに目が釘付けになった。「#土浦」「#カッパのミイラの手」

 気になって茨城県土浦市役所に電話すると、広報担当者はこう答えた。

 「確かに佐野子という地区に祭りがあります」

 「先日の祭りには、市長も出席しています」

 祭りを取り仕切っている住民への取材を仲介してもらうことにした。

 数日後、取材の場所に指定された「佐野子公民館」を訪れた。何の変哲もない公民館だ。待っていたのは、祭りの実行委員会の阿部守男さん(80)ら4人の住民。6月4日にあったという祭りについて聞いた。

 例年6月の第1土曜にある祭りは、今年3年ぶりに開かれた。住民によるおはやしのほか、野菜や果物の即売会もある。地域住民を中心に、500人近くが訪れたという。

 この地とカッパにどんな関係があるのか。4人の話を総合すると、室町時代から伝わる次のような民話に理由があるようだ。

 当時、近くでは川に流される人が相次いでいた。あるとき、あたりで一番の力持ちの「宇八(うはち)どん」が川で馬の体を洗っていると、馬が落ち着かない。

 よく見ると、カッパが尻尾を引っ張っている。捕らえて連れ帰り、殺してしまおうとしたところ、近くの寺の妙沢(みょうたく)和尚が「悪さができないように腕を引っこ抜くので、殺生はやめて逃がしてやろう」とその場をおさめた――。

 なるほど。少し残虐ではあるが、地域に伝わる民話としてはありそうな話だ。私は、おそるおそる尋ねた。「ミイラの手というのは、そのカッパの……」

 阿部さんはおもむろに立ち上…

この記事は有料記事です。残り910文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません