還暦で金メダル? 惨めでも諦めない元・中年の星に、もう一度奇跡を

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 今年で還暦です。夢は、五輪で金メダルを取ることです。

 そう聞いて、どれほどの人が真に受けるだろう。

 「信じないだろうね、普通は」

 クシャッとした笑顔が印象的なのは、アーチェリーの山本博だ。「でもね、いいの。俺は本気で信じているから」。今年の10月、60歳の節目を迎える。

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 2004年アテネ五輪、山本は銀メダルに輝いた。41歳だった。1984年ロサンゼルス五輪は銅メダル。20年ぶりに表彰台へ戻る奇跡を起こしたあの日、山本は「中年の星」とたたえられた。

 ただ、その先の競技人生について聞くと「ずっと下り坂」と苦笑した。

 アテネ以降、五輪の舞台には一度も立てていない。この10年ほどは、ナショナルチームにも入れなくなった。

 アーチェリー選手の旬は20代とされる。還暦を迎える選手がトップで戦い続けるのは簡単ではない。

 「まず、目。狙いがちゃんとつけられなくなる」と山本。70メートル先にある122センチの標的を射抜くのが、アーチェリーだ。手元の1ミリのズレが、数十センチの誤差を生む。繊細な競技にあって、加齢の影響は小さくない。

 弓を引く動作にも、衰えは確実ににじむようになった。「筋肉がザワつくんだよ」。日常生活では気づかない違和感があるという。

 「筋肉の歯車が、若い時はキチッと回っていた。でも、だんだん緩くなる。1本の矢を放とうとする時、もう滑らかに、しっとりと来ないんだ」

 2016年、右肩の筋断裂の手術を受けた。

 加えて20年夏には、鎖骨と肋骨(ろっこつ)が神経と血管を圧迫する「胸郭出口症候群」と診断された。右腕がしびれ、40キロ以上あった握力は一時、20キロ台に低下。それでも競技のため、左右の第一肋骨の切除手術に踏み切った。

 もう十分では? ここで引退しても「よく頑張った」と誰もが拍手すると思います――。

 そんな問いかけには、「自分…

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