老舗パン屋もついに値上げ 小麦、揚げ油…原材料高騰続き

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原田達矢
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 午後5時半、西陣の老舗パン屋「大正製パン所」(京都市上京区)では、店主がシャッターを下ろし、閉店時間より早く店じまいをしていた。同店の河戸晴美さん(70)は「だらだらとやっていたら電気代もかかる。とにかくコストを減らさないとね」。

 店の一番人気はカレーパンだ。最大で50個ほど売れる日もある。手作りのカレーを詰めてオーブンで焼き、一度冷蔵庫で寝かせてから、最後に揚げる。そうすることで、外はカリッカリ、中はもっちりとした食感になる。

 ただ、このパン一つを取っても物価高の影響を大きく受けている。カレーの材料のタマネギは1年前と比べて約2倍、輸入に頼る香辛料もここ数カ月で1キロあたり3200円から3690円へ値上がりした。生地の原料となる小麦粉も毎月のように価格が上昇している。最も上がったのは揚げ油の価格だ。半年前は一斗缶(18リットル)あたり2500円だったが、5560円に上がり2倍以上になった。

 総務省が6月24日に発表した5月の消費者物価指数(2020年=100)は、値動きの大きい生鮮食品をのぞいた総合指数が101・6で、前年同月より2・1%上がった。2%を超える上昇率となったのは、約7年ぶりに超えた4月に続いて2カ月連続だ。

 卸売業者から河戸さんのもとに届く値上げを知らせる文書は、昨秋から50枚近くになる。「何が上がったのか、もうわからなくて感覚がまひしているみたい」。仕入れの調整や、在庫管理で工夫したりしてきたが、それも限界になった。

 4月からパンの値段を5~20円上げ、カレーパンは175円から180円に。創業から約100年間、店を支えてくれてきたのは近くに住む常連。客の顔が頭に浮かび、悩んだ末の決断だった。

 政府は6月、物価高への対応策を話し合う「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合を開催。輸入小麦を国内製粉会社へ売る際の政府売り渡し価格の上昇抑制を検討するとし、食料品の値上がりを抑える対策を打ち出した。

 ただ、河戸さんは「緊急対策の効果がいつから表れるかわからない。値上げの天井が見えない」とこぼす。「これ以上値上げをしたら、お客さんがパンを手に取ってくれなくなるかもしれない。物価高対策だけでなく、買ってくれる人の財布のひもを緩めるためにも、政治の責任で国民の所得をあげてほしい」

 全国の県庁所在地と政令指定都市の中で、1世帯当たりのコーヒーの年間購入金額や購入量がトップの京都。そのコーヒー豆にも値上げの危機が迫り、家計へのさらなる影響が懸念される。

 コーヒー豆販売店「サーカスコーヒー」(北区)は、アフリカ産や中南米産などさまざまな豆を扱う。販売価格は100グラムあたり650~750円ほど。コーヒー豆の仕入れ値は、コンテナ不足と円安の影響もあり、1年間で2~3割ほどあがった。店主の渡辺良則さん(48)は「価格が上がる前にできるだけ多く仕入れているが、限界はある」と話す。

 悩んだ末、6月からコーヒー豆を入れる使い捨ての袋を廃止し、紙製の袋を20円ほどで買ってもらうことにし、豆の値上げは踏みとどまった。

 渡辺さんは「値上げをすればコーヒーを買って楽しんでもらうという、本来の目的が達成できない。今はできることをしたい」。この努力や必死さは、政治に伝わっているのだろうか。ふと不安になる。「国民の声を聞き、具体的に何をどう解決するか、きちんと約束してくれる政治になってほしい」と話す。(原田達矢)

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