伊豆山の歴史、復興の礎に 大河ドラマ効果で来訪者増

黒田壮吉
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 【静岡】昨年7月に土石流災害が起きた熱海市伊豆山は、平安時代から伊豆山神社を中心に山岳修験霊場として栄え、信仰を集めてきた。海沿いに日本三大古泉の「走り湯」が湧出(ゆうしゅつ)することから、「走湯山(そうとうざん)」の名でも知られる。土石流で大きな被害を受けたが、住民たちは歴史や文化に誇りを持ち、復興を願う。

 「伊豆山神社は、伊豆に流されていた若い源頼朝が北条政子との逢瀬(おうせ)を重ねた場所とされます。これが、2人が座って愛を語らったといわれる腰掛(こしかけ)石です」

 JR熱海駅から北東へ約1・5キロの伊豆山神社。6月下旬、ボランティア団体「熱海まち歩きガイドの会」の山口正幸さん(72)に伊豆山地区を案内してもらった。

 放送中の大河ドラマ鎌倉殿の13人」ゆかりの地としても注目を集め、平日にもかかわらず多くの観光客が訪れていた。「恋愛成就・縁結びのパワースポットとしても有名で、最近は若い人も多く見かけます」

 境内にある伊豆山郷土資料館の来館者も増えている。市教委によると、4月の入館者数は901人で昨年同月比約4倍、5月は1185人で同約5倍だった。担当者は「大河ドラマの影響が大きいのでは。伊豆山は土石流で有名になったが、歴史・文化にも注目が集まるのはうれしい」と話した。

 神社から837段の石の参道をくだると、海岸沿いに「走り湯」があった。全国でも珍しい横穴式の源泉で、1300年の歴史がある。熱海伊豆山温泉組合によると、伊豆山地区には約100本の源泉があるが、土石流で15本に被害があった。走り湯は2本のうち1本が復旧できない状態になったという。

 「ガイドの会」は15コースを用意。なかでも伊豆山コースは13年前の会発足時からあるといい、般若院や伊豆山神社、走り湯などをめぐる2時間半の健脚向けだ。「伊豆山は熱海中心部などとは異なる歴史を持つ場所で、興味深い」と、伊豆山に住む山口さん。土石流災害で道路が寸断されたことなどから一時中断していたが、今年になってから案内を再開した。

 コースをめぐると、土石流で多くの建物が流された警戒区域も目に入る。この日は、土石流被害の象徴的な存在となった丸越酒店の解体作業が進められていた。国道135号にかかる朱色の逢初橋とは別に中流部には石造りの逢初橋があり、頼朝と政子が再会した場所とされていたことや、その橋が土石流で流されたことなどは、山口さんの説明で知った。

 一方、地域を歩けばいまも石碑、地蔵などが点在することに気づく。山口さんは「昔から信仰心のあつい人が多く、人々が歴史文化を守り続けてきた証しでしょう」と語った。

 被害が大きかった伊豆山の各町内会は伊豆山信仰を中心に深く結ばれた歴史を持つという。伊豆山神社で毎年4月にある例大祭では各地区でみこしを出すが、その一部ルートが土石流でなくなった。

 熱海市が6月下旬に公表した「復興基本計画」では、歴史文化を活用する「創造的復興」の方針が掲げられた。伊豆山地区連合町内会の当摩達夫会長は言う。「どんな復興になるか分からないが、歴史を残し、文化が再生をすることを願っている」(黒田壮吉)