寺の食事でエースらパワーアップ 笑う住職「人生相談は…」 米子東

清野貴幸
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 鳥取県米子市にある県立米子東高校硬式野球部の3人は、練習を終えると、毎晩のように学校近くのある場所へと向かう。いずれも県外から進学し、一軒家で共同生活を送る球児たち。駆け込んだ先は、ちょっと意外な所だった。

 「こんばんわ~」

 6月下旬、暗くなり始めた境内に、選手たちの声が響いた。やってきたのは、エースの藪本鉄平君(3年)、内野手の増田大耀(たいよう)君(同)、佐々木青空(そら)君(2年)。練習でくたくたになった3人を迎えたのは、400年ほどの歴史があるという浄土宗・光西(こうさい)寺の宮本寛雄住職(53)だ。

 お寺通いは、藪本君らが入学した2年前の4月から始まった。県外出身の部員は、同校の野球部OB会関係者が探してくれた一軒家で共同生活するが、当初の問題は食事をどうするかだった。外食ばかりではお金もかかるし、栄養も偏ってしまう。

 そこに救いの手をさしのべたのが、宮本住職だった。檀家(だんか)でOB会の副会長を務める阿部功平さん(45)らから食事で困っていることを相談されると、寺で夕食を提供することを申し出た。宮本住職は息子が元球児で、自身も熱狂的な高校野球ファン。県内有数の進学校ながら、昨夏も甲子園に出場した強豪・米子東には愛着を感じていた。

 コロナ禍とあって、普段は3人だけで食卓に向かうことが多いが、この夜は宮本住職も同席。準々決勝で敗れた春の県大会を振り返るなど、野球談議に花が咲いた。「まだ人生相談は受けたことはないですねえ」と笑うが、過去には練習時間の確保の仕方などをアドバイスしたこともあったという。

 この夜のメニューは、トンカツをメインにマグロの刺し身、肉じゃが、ピーマンの炒め物、地元の中海でも取れるシジミのみそ汁など。調理を一手に引き受けるのは妻の和恵さん(52)で、地場産の野菜や旬の食材を使うなど気を配る。米は毎日計5合炊く。「親元を離れて野球も勉強も頑張りたいと思っている子どもたちなので、その一助になれば。家族の分を多く作る感じなので、苦だと思いません」

 藪本君と増田君は体重が10キロ以上増え、藪本君は好き嫌いがなくなり体脂肪率が下がった。食事に時間がかかっていた佐々木君は「先輩と一緒に食べるようになって早くなった」と笑顔。栄養バランスが考えられた寺の夕食が、育ち盛りの3人の健康を支える。

 増田君は「甲子園で勝つことが一番だが、応援してくれる人のため、普段から少しずつ貢献したい」と話す。阿部さんは、「ただ食事をいただくだけでなく、いろんな人に支えてもらっていることを感じながら成長してほしい」と後輩にエールを送る。(清野貴幸)