部員不足で「起用法も何も」…球数制限下の投手力格差、どう乗り切る

土井良典、東谷晃平、山崎輝史
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 2年半に及ぶコロナ禍で、高校野球では練習や試合の機会が減っている。球数制限など選手の体に配慮する指導のあり方も浸透してきている。投手をめぐる現状はどうか。東海3県の現場を訪ねた。

 東海道新幹線が近くを通る愛知啓成(愛知)のグラウンドには、ブルペンが15レーンも用意されている。同時に15人の投手が投げ込めるという。

 2019年4月、三重で14年夏の甲子園で準優勝に導いた中村好治さんが監督に就任した。50人に届かなかった部員が一挙に125人まで増えた、そのうち30人が投手。140キロを投げる投手が5人いる。

 エースは左腕の東祥大投手(3年)。投げるテンポを自在に操る投球術にたけている。東投手は「投手が多い分、他の人の知らなかったトレーニングとかを取り入れて勉強になる。自分の長所は何か、競争の中で考えるようになった」。

 中村監督は「コロナ禍や球数制限で、学校間でチーム力に差は広がっている面はあると思う」と話す。

 春の愛知県大会で8強に入り、「旋風」を起こした公立校の愛知商(愛知)。春の公式戦はすべてエースの岡田雅樹投手(3年)が投げ抜いた。

 岡田投手は県大会予選3試合で407球、県大会本戦では4試合で462球を投げた。雨天順延などの影響で、1週間に投球は500球までという「球数制限」に達しなかったが、起用には慎重を要した。

 愛知商では3年生は7人で、投手経験が豊富なのは岡田投手だけだ。安田良輔監督は「何よりも選手を大切にしたい。負けたら終わりの夏は試合日程が詰まった後半、差し迫った場面でどうしようか、悩ましい」。週1回はトレーナーに選手の体調をみてもらっているという。

「複数の投手必要」どうしたら

 球数制限で投手が複数必要と言われるようになった。だが地域性から、そもそも選手が集まらない高校もある。

 全校生徒約260人。そのため、慢性的な部員不足に悩み、「岐阜県内屈指の野球困難校」というのは、不破(岐阜)だ。田下雄基監督は「うちのチームはエース以外に投げさせられるやつはいない」と話す。

 正式な選手は7人。今春、山県との連合チームで公式戦に出たが、今夏はバドミントンを含む、ほかの部から助っ人を借り、単独出場にこぎ着けた。

 エースの飯沼海斗主将(3年)は直球とスライダーを使ってテンポ良く打ち取っていくタイプ。「仮に20点取られても僕なんじゃないですか」と笑う。「起用法もなにも彼一人というのが実情」(田下監督)。

 新チーム発足以降、連合で出場した春の地区予選を除いて、公式戦も練習試合も飯沼投手が1人で投げ抜いてきた。田下監督は「球数制限もなにも、とりあえず一つ勝たないことには始まらない。すべては飯沼のでき次第です」。

違ったタイプの投手で乗り切れ

 違ったタイプの投手をそろえて乗り切ろうという学校もある。

 松阪商(三重)のエース服部花衣投手(3年)は身長166センチ。「自分の身体では球速で押せない」と、サイドやスリークオーターで投げていた昨冬、アンダースローに変えた。

 「同世代に140キロ以上を投げる投手は多く、打者も速球慣れしている。自分の120キロ台の直球は打たれてしまう」。下手で投げる直球は100キロほど。変化球は80キロ台だ。「タイミングをずらして打ち取る。たまに内角で差し込む」

 松阪商は二枚看板。服部投手とは対照的に、もう1人の前川瑛太投手(2年)は191センチの長身から上手で投げ下ろす。「角度がついた直球に緩い変化球をまぜて、緩急で抑える」

 春の県大会地区予選は2人の継投で勝ち進み、強豪の私学も破った。北村祐斗監督は「高さが全く違うから、3、4順目になっても打者の目を慣れさせない。デコボココンビです」と話す。(土井良典、東谷晃平、山崎輝史)