コロナ禍救済の生活資金貸し付け、困窮世帯に重いツケ

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大畠正吾
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 6月初め、3回線用意した宮崎県社会福祉協議会の相談電話は終日鳴り続けた。「生活福祉資金」の返済に関する書類約1万7千通を送った直後のことだ。さまざまな問い合わせの中に、「収入は返済免除の基準を超えるが、生活が厳しい」と訴える人もいた。

 生活福祉資金は、社協が生活に困った人に貸し付ける制度。2020年3月、国はコロナ禍で失業や事業を休止した人のために2種類の「特例貸し付け」枠をつくり、80万円を上限に無利子で貸与を始めた。感染の長期化とともに枠は広がり、最大200万円まで借りることができた。セーフティーネットの役割を果たしたが、その最初の返済時期が来年初めに来る。

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 「辞めてもらってもいいよ」。コロナ感染者が出始めたとき、ひとりで子ども2人を育てる40代の女性は、フルタイムで働いていた職場から遠回しに退職を迫られた。月1回、家庭の事情で県外に出なければならず、「他県からウイルスが持ち込まれる」と警戒されたのだ。

 退職後、再就職先を探したが、どこも同じ理由で断られた。いまは午前4時半に起きて子どもの弁当を作り、パートで介護など二つの仕事をかけもちする。収入は半分以下に減った。

 女性が借りた特例貸し付けは枠いっぱいの200万円。子どもたちの学費などに使い、家計は一時的に助かった。しかし、いまも生活の苦しさは変わらない。

 「子どもたちに小遣いをあげられないのがつらい。友だちとランチして、おしゃべりしたい年頃なのに。母親の大変さを知っているから、『ほしい』と言わないんですが」

 県社協によると、県内での特例貸し付けの総額は約93億円で、世帯数は1万程度とみられる。返済は、住民税の非課税世帯などは免除されるが、約7500世帯は数回に分けて全額を返さなければならない。コロナ禍による困窮から抜け出せない人たちが重いツケに苦しんでいる。

 「特例貸し付けの返済時期が来ればさらに生活は圧迫され、自立が遠くなる」。宮崎市で活動する「フードバンクみやざき」代表理事の長友宮子さん(46)は懸念する。

 困窮家庭の見守りを兼ねて、約50世帯に毎月米や野菜を届ける「こども宅食」を続けている。配布先の9割がひとり親世帯で、さまざまな事情を抱えながら懸命に子育てをしている。特例貸し付けを利用した母親もいる。

 長友さんは救済策として「お母さんたちの負担の大きい給食費や制服代などの教育費をまず無償化してほしい」と提案する。

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 前出のパートの女性は、住民税が非課税なので初回の返済は免除される見込みだ。ただ、収入が増えれば、次回からは返済が必要になる可能性がある。

 女性は子どもが大学進学を望めば、何とかかなえてあげたいという。「私が死ぬまで借金を返済することになっても、お金のために子どもの夢をつぶしたくはありません」(大畠正吾)

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