命にかかわる「食」どう守る 高齢者、医療費負担の不安も

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河原田慎一
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 午前11時すぎ、龍安寺近くの京都市北区にある住宅街で、狭い道を縫うように、食料品などを満載した軽トラックが進む。移動スーパー「とくし丸」(本社・徳島市)の車が民家の駐車場にとまると、待ちわびた住民が玄関から出てきた。刺し身や総菜、豆腐などを次々に白いかごへと入れていく。運転手兼販売員との会話も、高齢者の楽しみの一つだという。

 とくし丸での買い物を楽しみにしているという牧野悦子さん(91)は、喫茶店の経営をやめた数年前に運転免許を返納し、足が弱って買い物に出かけることが難しくなった。「家で独りでいて、ぼけたらかなん。買い物で皆さんに会えるし、外の社会が見られるのがいい」

 自分でスーパーなどへ出かけるのが難しい「買い物弱者」は、過疎の山間地だけの話ではない。京都市内の市街地でも、移動スーパーのニーズが高まっているという。

 とくし丸と提携し、販売する商品を提供する地元スーパー「エムジー」によると、車には約400種類を積み、1日の売り上げは10万円ほど。移動スーパーは高齢者の「見守り」も兼ねる。週2回、決まった客の家約40軒を回るため、担当の貴多野勇一さんは「声をかけても出てこない、といった異変に気づける。地域の安全にも貢献したい」と話す。

 総務省の統計によると、京都府の昨年の高齢化率は29・6%。20年の国勢調査では、府内の65歳以上の高齢者のうち一人暮らしをしている人の割合は20・9%だった。全国で8番目に高い。年を取っても、健康で自立した生活が送れることが重要だが、20年度末の要介護認定率は21・5%で、全国の18・7%を上回る。京都市の高齢者福祉の担当者は「高齢者にとって食は、命に関わる。高齢化が進むのは間違いなく、単身者も増えている。栄養バランスの取れた食事が、在宅生活を維持する鍵になる」と話す。

 弁当を自宅に届ける「配食サービス」もニーズが高まっている。

 高齢者宅に弁当を宅配する「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」は、北白川店(左京区)だけで約800人分の弁当を届ける。届け先の高齢者の様子を見るのも大事な仕事だという。同店の岩城通晴店長は「介護サービスとは違い、食事であれば他人が家を訪れることへの敷居も低い。安心して在宅で暮らしていける手助けになれば」。

 だが、こうしたサービスも、物価高や燃料高の影響を受けつつある。同店のお弁当は、ごはん付きで一食590円。たんぱく質を増やすと食材費がかさむが「価格転嫁しなくてすむよう、極限まで頑張る」と岩城店長は話す。

 物価急騰の中で、高齢者の生活費や医療費負担への不安も高まっている。年金の支給額は6月支給分から0・4%の減額が始まった。一定の所得がある75歳以上の人が支払う医療費の窓口負担も、10月から原則2割に引き上げられる。

 宅配員から夕食の弁当を受け取った北区の野々口和子さん(81)は、「一つでも持ってきてくれるので助かる」と笑顔を見せる。背骨を痛めてから外に出歩くことが難しくなり、配食サービスを頼むようになったという。夕食の弁当は夫と2人で分けて食べ、おかずを一品増やすようにしているが、物価高の影響を感じている。「焼き魚を持って来てくれる近所の魚屋さんから『値段が上がってるけど堪忍して』と言われた」。ベッドを借りる費用の自己負担分や往診料なども、年金で生活する身には大きな負担だ。「決まった額の年金が徐々に切り下げられるのはつらい。政治家には、年金を何とか守って、安心して暮らせるようにしてもらいたい」(河原田慎一)

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