温泉街、待ち望む防災と復興 参院選へ「ビジョンを」

参院選2022

倉富竜太
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 大分県内で6人が犠牲になった豪雨災害からまもなく2年が経つ。大きな被害が出た湯平温泉(由布市湯布院町)と天ケ瀬温泉(日田市天瀬町)の本格的な復興は始まったばかりだ。

 「数十年に一度」と言われる災害が毎年のように起きる中で、次の犠牲者を出さない災害復旧と、一日も早く災害前の生活を取り戻したい住民の要望との折り合いをどう付けていくのか。阪神、東日本などの震災被災地で繰り返し浮上した課題がいま、県内でも問われている。

 6月25日。土砂降りの中、湯平温泉へ向かった。2年前の豪雨では、オリジナルキャラクターの電脳女将(おかみ)・千鶴で知られた「旅館つるや隠宅(いんたく)」の一家4人が車ごと花合野(かごの)川に流されて亡くなった。

 花合野川の下流域では河川工事が行われていたが、湯平温泉の一帯は手つかずだ。建物ごと流された共同浴場「砂湯」と、傾いた公衆トイレは、被災直後の痛ましい姿のままだった。

 県砂防課によると、花合野川の工事は3カ所で行われ、湯平温泉の上流域で砂防工事、下流域で河川改良復旧工事が被災直後から進んでいる。温泉のある流域でも被災前の状況に戻す工事が予定されたが、落札業者が決まらなかったり、現場が狭く搬入に時間がかかったりで、ようやく6月27日に始まったという。

 訪れた日は由布市に大雨警報が発令され、花合野川は濁った激流となっていた。湯平温泉観光協会の麻生幸次会長(53)は「観光客数はコロナ禍の前まで戻ってきている。流域の工事もやっと始まったが、こんな濁流を見たら不安を感じる」と語る。

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 天ケ瀬温泉では、旅館組合に加盟する旅館14軒のうち7軒が被災した。阿部信明組合長(62)によると、これまでに営業を再開できたのは2軒だけだ。

 県は今年1月、玖珠川の改修工事について、今年度から10年かけて行うと発表した。22、23年度で詳細設計や測量、地質調査を実施。28年度までにJR久大線が走る左岸を中心に川幅を拡幅する。並行して、立ち退きが必要になる住宅や旅館の用地買収や、泉源の補償について協議し、29年度から温泉の泉源もある河床掘削に取りかかる。

 阿部さんが営む旅館「丸山荘」は、自慢の風呂が三つとも壊滅的な被害を受けた。旅館としての再開は諦めたが、今月中旬には立ち寄り湯として営業を再開する予定だ。

 「2年後には河川改修工事で移転せざるを得ない。いつまた豪雨災害に見舞われるかもしれないのに、工事完了までに10年もかかるのか」と嘆いた。

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 江戸時代から続く老舗旅館「天龍莊」も、まだ営業を再開できていない。建物が土砂に埋まり、改築に時間がかかった。年内の再開を目指すという。

 社長の大庭龍一さん(70)は、「日々作業に追われ、2年はあっという間だった。工事が完了する10年後に、愛する天ケ瀬温泉の景色が一変しないか不安で仕方がない」と語る。

 大分選挙区の候補者は、防災・減災対策について問うアンケートに、「河川掘削や堤防整備」「河川の改良復旧」「国民の命を守る公共事業維持」「避難訓練を点検」「第1次産業の復興で山林を守る」「生活と生業の再建支援」といった回答を寄せた。ハードとソフトのどちらを重視するか温度差がある。

 大庭さんは言う。「国会議員は、天ケ瀬温泉の今後をしっかり考えてほしい。10年後の風景がどのようになるのかビジョンを示してもらいたい」(倉富竜太)

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