第121回ロシアは「敵国」、NATOを待ち受ける現実 元空将が抱く懸念とは

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聞き手・牧野愛博
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 北大西洋条約機構(NATO)は6月下旬、ロシアを事実上の敵国に位置づけ、大幅な軍事強化を図るなどした新しい戦略概念について合意しました。これで、今後10年間の欧州の安全保障は強化されるのでしょうか。在ベルギーの防衛駐在官やNATO連絡官などを務めた長島純・中曽根平和研究所研究顧問(元空将)に聞きました。

 ――NATOは危機に対応する即応部隊を30万人以上に増強します。

 即応部隊は前線に常駐しているわけではありません。危機の形態に応じて陸海空の統合部隊を編成し、各国がその都度、決められた兵力を提供します。

 今回の首脳会議で合意されたのは、従来の即応部隊の兵力4万人を大きく超えて、危機発生後10日以内に10万人、同10~30日以内に20万人、同30~180日以内に50万人までそれぞれ増強することでした。

 そもそも、どの国も国家主権の一部である軍隊の指揮権を他国に委ねることを嫌がります。これだけの増強に踏み切ったのは、NATO諸国の危機感の表れだと思います。

 また、NATOは冷戦後、ロシアとの相互信頼に基づき、常設戦闘部隊を東部地域に置かないことで合意していました。2014年にロシアがクリミア併合を宣言すると、その約束を破ったとして、1千人規模の部隊をバルト三国など4カ所に置きました。ロシアによるウクライナ侵攻後にはこれを8カ所に増やしました。戦い続けるのに必要な補給部隊も事前配置するとして、ロシアの武力による威嚇に対する抑止力と対処力を強化しています。

 ――旧ソ連製が多かった旧東欧諸国の装備をNATO基準にするそうですね。

ロシア将校が狙い撃ち 背景にある「兵士の育て方」

 NATOは従来、旧ソ連からの加盟国やパートナー国に対して、万一の場合に一緒に戦い続けるための相互運用性を確保するため、兵士の教育訓練なども行ってきました。バルト三国は04年にNATOに加盟した当時、ほとんど近代的な戦力を保有していませんでした。NATOが領空警備を肩代わりしたほか、NATO軍と一緒に活動することで、軍のレベルを上げていきました。

 NATO加盟国ではありませ…

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