第10回ハリウッドから見える日本の俳優の「弱すぎる立場」 松崎悠希さん

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聞き手・細見卓司、佐藤美鈴
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 米国を拠点に活動している俳優の松崎悠希さん(40)は、日本での一連の性被害の告発を受けて、ツイッターで精力的に改善策などの発信を続けています。業界内から受けるかもしれない反発を恐れず、訴え続けている思いの原点はどこにあるのか。ハリウッドで感じた、米国と日本での俳優が置かれている立場の違いや、今後の日本の映画界が進むべき方向性について尋ねました。

まつざき・ゆうき

1981年生まれ、宮崎県出身。7歳で演技を始め、俳優を目指して2000年に単身渡米。ストリートパフォーマーを経て、ハリウッドに移り、「ラスト サムライ」「硫黄島からの手紙」など40本以上の映画やドラマなどに出演。18年公開の「オセロさん」で「NOVA映画祭」などで主演男優賞を受賞。

 ――ツイッターで日本の映画界が抱える問題について発信を続けているのはなぜですか

 「僕自身が本当に何もないところからキャリアを築いてきた人間なのです。僕がハリウッドにいった理由は、もともと新聞奨学生をしながら日本映画学校(現日本映画大学)に通っていたときに、日本にはオーディションというシステムが根付いておらず、俳優として上っていける階段がないという現実に絶望したからです」

 「『どうすれば俳優になれるのですか』と学校の先生や先輩に尋ねても、彼らは答えられなかった。『運良く大手事務所に入れたら』『運良く紹介してもらえたら』『運良く監督やプロデューサーに気に入ってもらえたら』『運良く劇団に入れて、その劇団の先輩から事務所を紹介してもらえたら』……。要するに、自分自身の力で上っていける階段が一つもない。これはダメだなと思いました」

 「公平なオーディションのシステムが確立されている米国に渡り、ホームレスや大道芸人も経験しました。ハリウッドで、極貧生活を10年程度続けました。家賃が日本円にして約1万5千円の所に5年間住んでいて、最初はお風呂もありませんでした」

 「どれだけ俳優をめざすことがつらいことなのか、僕は分かっているつもりです。お金のない俳優という境遇も分かっています。その弱い立場である俳優たちが、日本では搾取されている。さらに、性搾取を行っている人間がいる。そういう人間を僕は許すことができない。だから、こうした現状を変えたいと思い、今も発信を続けています」

声明を出した瞬間に「抑止力」が生じる

 ――性被害やハラスメントには、日本における俳優の弱い立場も関係しているということでしょうか

 「そう思います。俳優の立場が弱すぎて、精神的に病んだり、ハラスメントを受けたりして辞めたケースを多数知っています。大手事務所に所属している俳優、特に女優の場合、監督やプロデューサーが『事務所との関係性を悪くしたくない』と意識し、守られているかもしれません。しかし、ハラスメントを受けたことのない女優のほうが珍しいのではないでしょうか」

 ――一連の性被害の告発から連帯の声が広がりつつあります。一方で、映画界全てが声明などの反応を見せているわけではありません

 「声明を出せない理由の一つは、パワハラ的な演出がこれまで美化されてきたこと、そしてそれを武勇伝とする監督が存在しているからではないでしょうか。性加害も含めて、ハラスメントを許さないという宣言を出せないのは、自浄作用がないことを自ら露呈したと感じます」

 「声明を出すという行為が…

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