連続放火した消防団員、語った別の動機 地元住民の嘆願書は意外にも
2021年秋、愛媛県今治市で相次いだ放火事件。逮捕されたのは、消火活動を担うべき消防団員の男だった。なぜ、火を付けたのか。法廷では、動機とともに、地元住民たちの思いも明かされた。
被告(26)は市の消防団員だった21年10~11月、深夜帯に3回、いずれも市内の木造平屋建ての建物や倉庫などに火を放ち、建物を全焼させたり、倉庫や山林の一部などを焼損させたりしたとして非現住建造物等放火や建造物等以外放火の罪で起訴された。被告はいずれも、起訴内容を認めた。
検察側は冒頭陳述で、被告は21年4月、地域の消防団に加入したが、緊急出動して消火活動する機会がなかったため、「消防団での消火活動に従事したい」と考え、自ら放火して火災を起こすようになったと主張した。
だが、法廷で被告が述べた理由は、少し違っていた。
今年5月17日、松山地裁であった被告人質問。被告は、グレーのトレーニングウェアに黒いマスク、丸刈り姿で証言台に座った。
テレビ番組や実際の火災現場で活動する消防士の姿を見て「市民の財産や命を守るため、現場の中に突っ込んでいく姿が格好良い」と憧れを抱いていたこと。
「やじ馬として現場に行くのなら、正式なメンバーとしてサポートしたい」と考え、消防団に入ったこと。
トラック運転手の仕事中に荷台から落ち、右手に靱帯(じんたい)断裂などのけがを負って休職し、夜に眠れなくなっていたこと――。
やや早口だが、はっきりとした口調で質問に答えていった。
火を消したいのではなくて
弁護人「事件の動機は」
被告「転落事故などのストレスがあり、消防団に出動したいという思いで火を付けた」
弁護人「団としての活動は楽しいものか」
被告「はい」
弁護人「消火活動がしたかったのか」
被告「火を消したいのでなく…
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きょうも傍聴席にいます。
事件は世相を映します。傍聴席から「今」を見つめます。2017年9月~20年11月に配信された30本を収録した単行本「ひとりぼっちが怖かった」(幻冬舎)が刊行されました。[記事一覧へ]