第1回「これはもう無理や」絵に描いたような医者の不養生 救いは農だった

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西江拓矢
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 「このままでは死んでしまう」。病気の人を減らしたいと医者になったが、現実とのギャップ、過労とストレスで病んだ。助けとなったのは、農の力。「半農半医」として、自然の力を生かした農業と、健康で暮らせるための病気予防に取り組んでいる。

 5月初旬、和歌山県北部に位置する紀の川市。豊田孝行さん(46)が、畑を案内してくれた。桃の木の周囲には、ひざ丈ほどの草が生い茂っている。ここでは、草は極力刈らず、基本的に農薬や肥料は使わない「自然栽培」。目指すのは、「環境を守り、人も健康になる農業」だ。

 実家は桃農家で、幼い頃から農業が身近にあった。一方で、母親が看護師だったことから医療に触れる機会も多く、医師にもあこがれた。「農業はもうからない」という周囲の声に押され、「病気で苦しむ人を助けたい」と医師を志した。

 県立医科大を卒業後、大学病院などで勤務した。29歳の時、大阪府南部の泉佐野市で耳鼻咽喉(いんこう)科のクリニックを開業した。寝る間を惜しんで診療にあたった。

 冬から春にかけては、花粉症などアレルギーの患者がひっきりなしに来院した。朝7時ごろ出勤し、診療の終わりが夜の10時、11時になったことも。医師は一人で、最も多い時で一日190人ほどを診察した。

 実家から車で40分ほどかけて通っていたが、家に帰る時間も惜しいときは、点滴用ベッドの上で寝袋を敷いて寝た。食事はインスタント食品やコンビニ弁当など。ストレスでお酒を飲み歩いた。絵に描いたような医者の不養生だった。

 病気の人を治すために医者になったのに、治療しても治療しても患者の数は減らず、むしろ増えた。「この先何十年も続くのか」。絶望を感じた。

 開業して数年後、「もうあか…

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