戦争を始めた人と故郷のうつくしい犬 当事者性の細い糸 穂村弘さん

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穂村弘さん|歌人(寄稿)

ほむら・ひろし

1962年生まれ。歌人。著書に歌集「シンジケート[新装版]」、エッセー「鳥肌が」、評論「短歌の友人」など。

言葉季評

 2022年の2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。そのニュースを知った時、とても驚いた。そういう昔ながらの戦争は21世紀には起こらないように、なんとなく思い込んでいたからだ。

 誰のためにもならないのにどうして、と怖(おそ)れつつ、でも、そんな私の思いなど何の役にも立たないのは明らかだった。

 その日から、スマートフォンで情報を追いかけるようになってしまった。見れば、必ず胸が痛む。気持ちが落ち込むのはわかっているのに、戦況の変化が気になって止めることができないのだ。

 そんなある日、雑誌の投稿欄にこんな短歌が送られてきた。

 

戦争がおきてしまった世界一無意味な涙わたしの涙      シラソ

 

 遠い日本で自らは無傷のまま流す「涙」を「世界一無意味」と感じながら、それでも「涙」は止まらない。そんな「わたし」の絶望に胸を打たれた。

 現実の世界では戦場は遠いのに、情報はどんどん飛び込んでくる。ただ、その真偽はわからない。わからないままに、小さな画面を見つめ続ける。遠いはずの戦争が目の前にある。その二重性が過去の戦いとは違っていた。

 次の短歌は、新聞の投稿欄の…

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