台所から忍び込む排外主義 物価高不安を利用されるな 藤原辰史さん

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聞き手・高重治香
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 ロシアのウクライナ侵攻や円安などの影響で、食品価格が値上がりしています。いつまで値上がりが続くのかと、不安を抱く人も多いのではないでしょうか。戦争と農業の歴史に詳しい、京都大学准教授の藤原辰史さんは、一つの戦争がもたらした食の不安が次の戦争を引き寄せた歴史を語ります。

ふじはら・たつし 1976年生まれ。京都大准教授。著書に「カブラの冬」「ナチスのキッチン」ほか多数。近著に「中学生から知りたいウクライナのこと」(小山哲共著)。

 ――食品が軒並み値上がりし、不安です。

 「今の値上げの大きな原因の一つは、ロシアのウクライナ侵攻です。ロシアによる黒海の封鎖などで、小麦やトウモロコシをはじめウクライナの農産物の輸出が滞っています」

 「戦争による食料危機は、歴史上も繰り返し起きています。第2次世界大戦では、日本の人びとも飢えました。フィリピンで兵士として飢餓を体験したダイエー創業者の中内功さんは、戦後、朝から晩まで大量の食べ物がきれいに陳列されたスーパーを作りました。これに象徴されるように、現在の大量生産・大量消費のシステムは、戦中世代の飢えの恐怖の裏返しなのではないかと思います」

 ――スーパーでもコンビニでも、棚に食べ物がぎっしり並んでいる風景を当たり前のように感じます。

 「食べ物があふれていると、その根源が飢えへの恐怖であったとしても、『飢えた経験』そのものは忘れてしまうものです。だから今回、ウクライナ侵攻の影響で値上げが起きると、日本の政府も人々も慌てることになりました」

 ――もっと値上がりする前に、米や缶詰を買いだめしておくべきか迷っています。

 「私は2011年の原発事故の時、幼かった子どものためにコンビニに水を買いに走りましたが、客はみんな殺気立って、ペットボトルを奪うように買いあさっていました。飢えと渇きは人間の不安の根幹にあるから、飲食物が手に入らなくなる、という不安はコントロールできないものです。注意すべきは、その不安が、政府などによって本来あるべき方向とは異なる方向に向けられて利用されることです」

兵糧攻めと銃後76万人の餓死

 ――どういうことでしょうか。

多くの餓死者を出した第1次大戦後のドイツで起きたことと、現在との共通点とは。インタビュー後半では、日本の低い食料自給率などについても語ります。

 「私が研究しているドイツで…

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