書き置き1枚で店を辞めた 「伝説の家政婦」タサン志麻さんの転機

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聞き手・高木智子
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 「予約のとれない伝説の家政婦」として知られるタサン志麻さん。大好きなフランス料理の店で長く働きながらも違和感を抱え、書き置きを1枚残して店を去るという深い挫折を経験しました。でもそのおかげで、本当にやりたかった「家政婦」にたどりついたといいます。その道のりを、詳しく語ってくれました。

たさん・しま

1979年、山口県生まれ。大阪の辻調理師専門学校、辻調グループフランス校卒業。帰国後に老舗レストランなどで勤務し、フリーの家政婦に。「厨房(ちゅうぼう)から台所へ」(ダイヤモンド社)など著書多数。

――「家政婦の志麻さん」と知られていますが、入り口は料理ですね

 山口県の高校を卒業して、辻調理師専門学校に進みました。進学校でしたので、周りはほとんどが大学に進学していましたが、迷いはありませんでした。自分は自分で、人に合わせる必要はないと思っていました。好きなものは好きだけど、そうじゃないものもはっきりしている。今思えば、フランスの個人主義の考え方がすごく合っていますね。

――そこで料理の基本を学びました

 最初は日本料理を考えていましたが、辻調に入ってフレンチに進むと決めました。とにかく本をよく読むことからスタート。フランス料理だけでなく、文化も勉強しました。辻調グループフランス校では、高級感がある三つ星の店で研修しましたが、堅苦しさが当時から嫌いでした。「三つ星じゃなくて、ビストロで働きたかった」と言いましたが、先生に「なかなか体験できないんだから、頑張ってこい」と諭されました。

フランス留学、会話の絶えない食卓に共感

 ホームステイのようにフランスの家庭に入ってご飯を食べたことがありました。日常的なフレンチに、あたたかみを感じたんです。フランスは食べる時間、食べる長さが違います。ホームパーティーは午後2時からつまみながら夜10時まで。びっくりしますよね。普通の食事も2~3時間は平気で、とにかく会話が絶えないんですよ。しゃべって笑っているから、BGMはいらない。私が経験してきた食べる時間とはすごく違ったんです。フランス人は食べることになぜこんなに時間を費やしているんだろう。そういうことを知りたくなりました。

――20歳で帰国しました

 就活するんですが、「なにか…

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