岸田文雄首相が「資産所得倍増」を打ち出したのを見て、首をかしげた人も多いのではないでしょうか。昨秋の自民党総裁選で「令和版所得倍増」を掲げていたのに、いつの間にか「資産所得倍増」に化けていたからです。資産所得で格差が拡大しないのか。投資が失敗して困ることはないのか。現代政治分析が専門で法政大学教授の白鳥浩さんは、岸田さんの派閥の宏池会へのノスタルジーや、こだわりを指摘しつつ、アベノミクス以上に新自由主義的になっていないか、と危ぶみます。
1968年生まれ。専門は現代政治分析。英国オックスフォード大学客員フェローなどを歴任し、現職。
――「新しい資本主義」の具体策として岸田文雄首相が打ち出したのは、「資産所得倍増プラン」でした。
「『Invest in Kishida(岸田に投資を)』――。岸田文雄首相は5月、ロンドンの金融街・シティーでの講演で「貯蓄から投資へ」「投資による資産所得倍増」と打ち上げました。2013年、安倍晋三首相が米ニューヨーク証券取引所でアピールした「Buy my Abenomics(アベノミクスは買いだ)」と、どこか似ています」
「違うのは、アベノミクスが従来の産業構造、とくに製造業の存在を前提としていたことです。円安で輸出企業が恩恵を受け、それが地方にしたたり落ちていく『トリクルダウン』によって、景気浮揚をめざすストーリーです」
「今回の岸田さんは、より直…