ひとり親の苦労「議員にはわからない」

参院選2022

川村さくら
[PR]

 【群馬】「選挙には行かない。お金がある人たちには、お金がない人たちのことは分からないだろうから」

 県内でピアノ講師として働きながら、高校生の息子をひとりで育てる女性(44)は、諦めたように語る。

 息子が1歳の時に離婚。相手の浮気などが原因だった。実家で数年暮らしたあとは、ずっと息子と2人で団地で暮らしている。

 放課後等デイサービス、児童発達支援――。ピアノ講師の収入だけでは食べていけない時もあり、他の仕事とのダブルワーク、トリプルワークをこなしてきた。

 忙しさで余裕をなくして息子に当たってしまうこともあり、そのたびに自己嫌悪に陥った。過労で入院したこともあった。

 現在の月収は12万円前後。そこに元夫からの養育費や児童扶養手当などを加えた約20万円で、母子の生活をまかなっている。

 息子には、苦労を見せないようにしてきた。それでも、子どもなりに感じているものがあるようだ。

 外食してもすぐ、「もうおなかいっぱい」。洋服やカバンが使い古されていて買い替えを勧めても、「まだ使えるよ」。

 遠慮させているのだと思うと切ないが、「大学は好きなところに行っていいからね」と繰り返し伝えている。貧困によって、子どもの選択肢を狭めることはしたくない。授業で使う5万円のタブレット購入費などは家計への痛手となるが、切り詰めながら息子の将来に備えている。

 これまで、児童扶養手当、医療費や高校の授業料無償化といった自治体の制度には助けられてきたと感じている。

 一方で、それらは高校を卒業すれば対象外になる。昨年度の高校生の大学や短大、専門学校への進学率は過去最高の83・8%。ほとんどの子どもが進学し、学費もより高くなる実態があるのに、一律で手当を打ち切られることになる。

 大学生となった息子が、体を壊しても医療費を心配して病院へ行くのを我慢するなどしないかと、心配が募る。経済的に苦しくても子どもたちが可能性を広げ安心して暮らせる社会には、ほど遠いと感じる。

 「議員の家庭は、1カ月20万円で生活したことないでしょうね」

 そうした制度の不十分さを目の当たりにすると、政治家たちとの距離を感じる。高い歳費を受ける国会議員に、低所得で子を育てるひとり親の苦労が本当にわかるのか。

 投票に行ったのは、選挙権を持った初めての選挙の「記念で」1回だけ。自分たちの声が政治に届くとはどうしても思えず、希望はずっと持てていない。

 ひとり親世帯などを支援する群馬県母子寡婦福祉協議会の担当者は「努力しても生まれた環境によって進学を断念するといった、人生の選択肢に違いが出てくるのはあまりにかわいそう」だと話す。

 給付型奨学金や教育費のさらなる補助など、その差を埋めるための制度がもっと広がることに期待する。ただ、一時金だけでは限界があるとも感じている。

 同協議会には年間200件超の相談が寄せられ、コロナ禍では「収入が減った」「元夫の収入減で養育費が減った」などの相談が目立つという。担当者は「ひとり親を正規雇用することで企業がメリットを受ける制度の拡大といった、長い目で親の暮らしが安定するような国の取り組みが必要だ」と指摘する。(川村さくら)

貧困家庭の現状

 厚生労働省の「2019年調査」によると、所得が中央値の半分に満たない世帯の割合を示す相対的貧困率は15・4%で、子どもの貧困率は13・5%だった。中でも、大人が1人で子どもを持つ世帯の貧困率は48・1%に上った。

 そうした「ひとり親世帯」についての厚労省の調査(16年度)では、全国に母子家庭は123万世帯、父子家庭は18万世帯。母子家庭では、親が正社員なのは44%で、平均年収は243万円にとどまる。両調査では、母親たちの45%が「大変苦しい」、58%が「教育・進学」を最も大きな悩みとしていると答えた。

 苦境はコロナ禍で拍車がかかっており、認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)が21年1月にひとり親約2300人に聞いたアンケートでは、約7割が「収入が減った」と回答している。

参院選2022

参院選2022

ニュースや連載、候補者の政策への考え方など選挙情報を多角的にお伝えします。[記事一覧へ]