西大和学園に首席合格、野球続けるのは挑戦 目的ではない夏の甲子園

浅田朋範
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 「東大の理科三類を目指しています」。テストでは常に学年で10位以内。東大合格者79人(2022年度)の実績を誇る関西屈指の進学校、西大和学園(奈良県河合町)で学業と野球に打ち込むのは岩切瞭史朗(りょうしろう)(2年)。「勉強だけできる人間になりたくない」「将来の選択肢を広げたい」という思いで両立をつらぬく。

 「米アップル」創業者の故スティーブ・ジョブズや「米フェイスブック(現・メタ)」創業者のマーク・ザッカーバーグを目標に挙げる岩切は、甲子園球場がある兵庫県西宮市で育った。父親に連れられて球場で野球観戦する幼少期を過ごし、自身も自然と野球を始めた。

 中学受験を経て、西大和学園に男子の首席で合格した。得意科目は数学、理科。「数列を見ると心がときめく」という根っからの理系だ。将来も得意科目を生かしたい。「どうせやるなら一番上を目指したい」。そう思って東大理三を志望している。

 「超」進学校で、上位成績の維持と部活の両立は容易ではない。中高一貫の西大和学園では、高校に上がるときに部活動をやめる人もいる。

 岩切には「どうしても中学で終わりたくない」との思いがあった。コロナ下で、中学の引退試合となる県大会が中止となった。不完全燃焼のまま野球から離れるのは、嫌だった。

 時間が足りないのが悩みだ。

 野球部の練習は月、水、土曜の週3日。平日の練習後は午後6時半ごろに下校し、西宮市の自宅に着くのは午後8時過ぎ。就寝前に2時間ほど勉強し、翌朝は5時半に起床。午前7時半に登校すると、授業が始まるまで自習室で机に向かう日々を送る。

 土曜の練習には参加できない。西大和学園は、理数系教育に力を入れ、研究開発に取り組むスーパーサイエンスハイスクールに指定されている。岩切は昨年秋から、回転と振動を利用するジャイロ発電の研究に取り組んでおり、土曜に実験があるためだ。他の部員も学校の委員の仕事があり、全員が集まって練習できる時間は少ない。

 練習時間の不足は、他の部員のプレーを見て自分だったらどう動くかイメージトレーニングをしたり、積極的にアドバイスの声を出したりすることで少しでもカバーしている。

 グラウンドでは、勉強にも通じるリサーチ力や分析力を生かし、インターネットなどで学んだ守備やバッティングのコツを仲間に伝える。

 西大和学園では2年生で部活を終え、大学受験準備に専念する。硬式野球部は引退試合となる秋の近畿大会県予選に照準を合わせている。この夏の経験を、目標とする秋のベスト4入りにつなげたいところだ。

 両立生活を送る岩切の睡眠時間は5時間半ほどで、常に眠い。通学の電車で参考書を読みながら寝てしまうこともしばしば。そんな状況でも、パソコンを使った3Dシミュレーションや動画編集など、新しいことにももっと挑戦したい。

 こうしたモチベーションは野球で培われたと思う。野球を通じて、失敗を恐れず色んなことに挑戦する姿勢や、礼儀も身についた。

 大学でも野球を続けるつもりだ。東大の硬式野球部は東京六大学野球連盟に所属している。「神宮球場でプレーしてみたいな」=敬称略

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 取材を通じて、球児たちのモチベーションが頂点をめざすことだけではないことに気づいた。性差、受験勉強、プレッシャー……。多様な環境や条件と向き合いながらボールを追う球児たちの思いに迫った。(浅田朋範)