6月3日の昼過ぎ、東京・南麻布にあるフィンランド大使館は、50人ほどの来客でにぎわっていた。「フィンランド国防軍国旗の日レセプション」だった。そのなかに、防衛省防衛研究所戦史研究センターの庄司潤一郎主任研究官がいた。庄司氏は中庭に用意された軽食をとりながら歓談した後、大使館を後にしようとした。50センチ四方ほどの茶色の紙袋を渡された。渡された瞬間、庄司氏はその軽さに驚いた。
各国大使館はレセプションの後、簡単なお土産を渡すのが通例だ。観光案内や特産品が準備されることが多い。フィンランドと聞いて日本人が思い浮かべるのは、トーベ・ヤンソンの名作「ムーミン」かサウナ、はたまたサンナ・マリン首相の来日で話題になった「ジェンダー先進国」といったイメージだ。
庄司氏が紙袋を開けると、中からグレーの毛糸玉と編み棒、説明書などが出てきた。毛糸玉は、フィンランドの毛糸メーカーNOVITAのものが100グラム(130メートル分)。6月に日本でリバイバル公開されたフィンランド映画「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」のチラシもあった。
第2次世界大戦当時の1941年から44年にかけて繰り広げられたフィンランドとソ連の「継続戦争」を描いた作品だ。
ソ連は39年11月末にフィンランドに侵攻し、40年3月まで続いた「冬戦争」でフィンランド領土の一部を奪った。フィンランドは41年6月に独ソ戦が始まったことを契機に、再びソ連に「継続戦争」を挑んだ。最後はドイツの敗勢によって、フィンランドが再び、大幅な領土の割譲を行って終わった。
なぜ、毛糸玉と戦争映画なのか。
紙袋には96年に日本に設立…
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら

ウクライナ情勢 最新ニュース
ロシアのウクライナ侵攻に関する最新のニュース、国際社会の動向、経済への影響などを、わかりやすくお伝えします。[もっと見る]