昨夏の「祇園北旋風」支えたデータ野球 球児らの分析能力は県内屈指

松尾葉奈
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 広島県立祇園北高校の「総合的な探究」の授業は、生徒が疑問に思ったことをデータや実験を通して研究し、発表する。

 パンケーキがふわふわになる条件、ウソ発見器はどうウソを発見するか……。

 クラスメートが次々と面白そうなテーマを決めるなか、2年生だった室元俊太朗君(3年)はやりたいテーマが見つからず悩んでいた。

 「こんなのあるけど、使ってみるか」。昨年5月、担当の先生から声をかけられた。見せられたパソコンには、野球場を模したデータ入力画面と、細かい計算式が広がっていた。球種やコースを入力すると、打率などの数値が表示される。

 「この分析ツールを野球部にも生かしてみたいな」。想像がふくらんだ。

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 室元君はマネジャーとともに分析ツールを使い、紅白戦でデータを集めた。打者なら打率や苦手な球種、投手なら球種別の被打率などをエクセルで計算し、部員たちと共有した。

 選手としては岐路に立っていた。指を故障し、コロナ禍で十分に練習もできず、レギュラー入りは遠かった。

 そんなとき、篠原凡副部長(34)から声をかけられた。「練習試合を見ながら分析するから、一緒に行こう」。昨夏の広島大会が目前に迫っていた時期だ。重要な役割に責任を感じた。「解析班」として全力で取り組もうと気持ちが切り替わった。

 個人の課題がデータではっきりすると、練習も変わった。部員一人ひとりが、苦手な球種を中心に打撃や投球の練習に打ち込んだ。

 迎えた昨年7月の広島大会。チームはノーシードから創部39年目で初めて決勝に進出し、準優勝を果たした。祇園北旋風――。そう呼ばれた。「もしデータがなかったらここまで勝てなかったかも」。室元君は手応えを感じた。

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 祇園北旋風の陰で、浮かない顔をしている部員もいた。

 「何もできなかった」。昨夏の決勝、2年生ながら先発した岡森壮汰君(3年)は初回に5失点して降板した。

 悩む岡森君を支えたのも、データだった。過去の試合での球種を分析すると、自分が追い込まれた場面では直球しか投げていないと判明。変化球を磨いて、ストライク率を上げることを意識するようになった。

 球の回転数の測定器も導入した。球威が落ちるのは回転数が落ちるから。それを数値で確認し、納得のうえで、睡眠や食事を見直して体重を増やした。筋力トレーニングにも力が入った。岡森君はこの夏、背番号1をつかんだ。

 昨夏から集められたチームのデータは30試合分を超える。

 室元君は他の部員3人とともに、投手一人ひとりの特徴や決め球を数値から導き出し、研究としてまとめた。今年1月、県内の高校が科学研究の成果を発表する県科学セミナーで、情報分野の1位に選ばれた。

 最後の夏の目標は、祇園北旋風の再来、そして優勝だ。13日の初戦に向け、打撃や守備位置を確認しながら調整を進めている。

 豊富なデータがあるから、アドバイスができ、意見も言える。それがチームの力につながった。

 「データは僕の存在が生かせる、活躍できる場所。データに救われたな」

 室元君は、そう実感している。

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 これまでの価値観にとらわれず、自分らしさを追い求める。Z世代と呼ばれる10代~20代半ばの若者たちには、そんな特徴があるとされる。夏の高校野球シーズンを迎え、それぞれの球音をたどった。(松尾葉奈)