佐渡島から海越え、心の壁も越えた 連合の球児ら、仲深めた質問攻め

友永翔大
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 第104回全国高校野球選手権新潟大会(朝日新聞社、県高校野球連盟主催)の開幕が9日に迫っています。かけがえのない仲間とともに最後の夏にかける3年生を追いました。

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 2―12、六回コールド。

 新潟県佐渡市の羽茂(はもち)と、新潟市の新潟向陽、万代。海を隔てた3校の連合チームの初陣は、主将の菊地聖(3年、羽茂)が感じていた「不安」が形になって表れた。

 昨夏の新潟大会が終わり、羽茂は3年生8人が引退。選手3人とマネジャーだけでの始動となった。

 打撃でも守備でも走塁でも、これまで当たり前にできていた練習がままならなくなった。何より野球はチームプレー。地理的に遠い連合を組む2校と、連係プレーの精度や団結力をどうやって高めていけばいいのか。初めての経験に戸惑うことだらけだった。「とにかく不安しかない」。菊地は言いしれぬ感情を抱えていた。

 週末になると海を渡った。午前5時半発のフェリーに乗って2時間半。2校のメンバーと合流し、他のチームと練習試合をして、夕方の便で再び島へ。そんな慌ただしさもあってか、それぞれが同じ学校のメンバーで固まり、他校と言葉を交わすことはほとんどなかった。

 顔と名前がようやく一致するようになったぐらいという状態で臨んだ初の公式戦、秋の県大会で、恐れていた連係ミスが続出した。三遊間の打球の処理で呼吸が合わず動き出しが遅れたり、バント処理の際にあいたベースのカバーに誰も入らなかったり。10点差、しかも安打ゼロの完敗だった。

 「学校ごとの壁があった」と菊地。課題は明らかだった。一緒に練習できるのは週1回。「連合だからしょうがないんじゃないの」。あきらめにも似た声も上がった。

 そんなムードを、新潟向陽の4人が変えた。「羽茂って全校で何人ぐらいいるの?」「普段どこに行って遊ぶの?」。島での生活について羽茂のメンバーを質問攻めにした。万代の面々も加わり、少しずつ、それぞれが意識して声を掛け合うようになっていった。学校の「壁」を越え、距離が縮まり始めた。

 「もっともっとコミュニケーションを取りたい」。一塁手の猪股昇悟(3年、羽茂)は焦っていた。もうすぐ冬がやって来る。離ればなれになるシーズンオフが近づいていた。

 4月上旬。シーズンが始まって最初の練習があった。顔を合わせるのも5カ月以上ぶり。またぎくしゃくしてしまうのではないか。猪股はちょっと緊張していた。「おっす」。拍子抜けした。オフの間も会っていたかのように、みんな自然に迎えてくれた。

 この日は試合ではなくチームだけでの合同練習。実際の試合を想定し、さまざまな場面ごとに守備の連係を3時間かけて確認した。「試合とはまた違い、チームをじっくり見つめるいい機会になった」

 そして迎えた春の県大会。初戦をコールドで快勝すると、続く3回戦も7―5で競り勝った。4回戦は5―6と一歩及ばなかったものの堂々の16強入り。連合チームでは、2020年の秋に見附と三条商が初めて成し遂げて以来だった。

 そんな快挙にも、達成感より負けた悔しさが先に立った。猪股も「めちゃくちゃ悔しかった」。そこにチームとしての成長も感じている。「今のうちには単独チームにも負けない団結力がある」と自信を見せる。

 菊地はまだ不安を拭えないでいる。自身の調子が上がってこないからだ。主将でありトップバッターの自分が打たなければ。そんなプレッシャーがまた力みにつながっている。

 でも今は、頼りになる仲間がいる。ユニホームは違えど、心は一つ。最後の夏へ、一戦必勝で挑む。=敬称略(友永翔大)