餌、肥料、燃料の高騰に生産者悲鳴 JAが緊急要請、補助へ動く行政

参院選2022

南島信也
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 【静岡】「農業経営が成り立たなくなることは、食糧安全保障の面からもあってはならない」

 裾野市の村田悠市長は力を込めた。6月27日、JAふじ伊豆の梶毅専務らが緊急要請のために市役所を訪ねたときのことだった。

 村田氏はさらに「農家のことや市民の台所事情を考え、肥料価格の上昇分について補助する制度の設計を進める」と続けた。

 コロナ禍による生産・出荷資材の価格高騰、ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安による肥料・飼料・燃油の価格高騰……。農家の経営の根幹を揺るがす事態になっている。そのため、JAふじ伊豆の役員らは手分けして管内11市9町の首長を回り、予算措置や補助制度の新設などを陳情していた。

 イチゴとミニトマトの生産で知られる伊豆の国市。2021年度の売上高はそれぞれ16億円、11億円と、市の主要農産物となっている。脱サラして移住してきた新規就農者が多く、イチゴは25人、ミニトマトは57人全員が「ニューファーマー」だ。今年になって、彼らの悲鳴が市農林課に届くようになった。ハウス張り替え用ビニールや燃油の価格高騰が響いていたのだ。

 農林水産省出身の山下正行市長は「可能な限りスピーディーに対応するように」と指示。支援策を検討していた農林課は制度設計を急いだ。市議会は6月30日、1農家あたり上限20万円として燃油・飼料代の高騰分を補助する約4400万円を盛り込んだ補正予算案を可決した。静岡県も約61億円の予算を組み、施設園芸・畜産農家、漁業者らの緊急支援策として、燃油・飼料の購入費の助成を始める。

 飼料価格の高騰は、卵の生産現場にも大きなダメージを与えている。この半世紀、ほとんど価格が変わっていないことから「物価の優等生」と称される卵。生産者は、人口減少で縮む国内市場から成長著しい海外市場へと目を向け始めている。

 富士宮市の富士たまご。「森のたまご」ブランドで知られる鶏卵業界最大手イセ食品のグループ企業だ。新たな生産拠点として19年4月に稼働した。富士山のふもとにある広大な鶏舎で160万羽を飼育し、日に120万個の卵を生産している。

 福沢淳一社長(52)は「これまでずっと身を削ってきた。企業努力だけではもうどうにもならない」と苦悩の表情を浮かべる。配合飼料価格が空前の高値になっているためだ。

 配合飼料は、中国の需要増と南米産の作況悪化で2年ほど前から上昇し始めた。そして、新型コロナの世界的な感染拡大により輸入がストップ。さらに原油高、円安で輸送コストが上昇した。電気、卵のパッケージ、段ボールなどの価格も高騰し、負のスパイラルが続く。

 福沢社長はいま、円安を生かし輸出に活路を見いだそうとしている。海外では日本食ブームで、日本の卵の品質の高さが評判だ。店頭に並ぶ際は倍の値段になるという。「物流費がのしかかるが、秋には香港に向け第1弾を輸出する予定」という。

 農林水産省によると、日本の食料自給率はカロリーベースで37%(20年度)と、主要先進国で最低水準にある。10日に投開票される参院選では、ロシアや中国などを念頭においた安全保障政策が争点になっているが、食糧安全保障への関心は薄い。(南島信也)

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