球児が納得するまで言葉尽くす指導 育成功労賞に富士宮西の古殿監督

魚住あかり
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 高校野球の発展と選手の育成に尽力した指導者を、日本高校野球連盟と朝日新聞社が表彰する「育成功労賞」に、静岡県内から富士宮西の古殿和彦監督(58)が選ばれた。「人や社会に何かを与えられる人間に」という理念に基づいた指導などが評価された。

 「自分でいいのかな。まだ指導に自信はありません」とあくまで謙虚だ。日本体育大を卒業後、富士高校を振り出しに、三島南、韮山、富士東で指導にあたってきた。今年で35年目だが、今も指導方法を模索している。

 生徒に対しても、謙虚に言葉を尽くす。「打ったら全力疾走」。高校野球でよく耳にする言葉だが、ただの精神論ではない。相手へプレッシャーをかけ、試合を優位に進める意図があると伝える。「『今どきの子は言ったってわからない』とよく言われるが、我慢が足らないのは大人」。生徒が納得するまで説明を繰り返すことが、その後の人生にもつながると考える。

 謙虚な指導の裏には、「超えられない存在」の先輩指導者がいた。初任地の富士で監督を務めていた坪内一哲さんだ。富士宮西でも監督を務め、「一球を大切にする心」という坪内さんのモットーは今もチームに引き継がれている。

 新人時代、坪内さんの指導を見て学んだ。「野球は一球一球の積み重ね」と、エラーをした選手はすぐ交代させた。それでも次の試合にはチャンスの場面で代打に起用するなど、最後まで目をかけた。

 坪内さんのような一貫した指導は自分には出せない。それでも自分と野球をしたことで、何かを感じてくれたら、と願っている。

 夏の大会後、坪内さんから聞いて大切にしている言葉を3年生に伝えている。「人生のレギュラーポジションを取れ。自分が生かせる場所は絶対あるから」。高校野球での経験を糧に、社会で活躍してほしい。そんな思いでこれからも背中を押し続ける。(魚住あかり)