野球は金持ちスポーツになったのか 指導者たちが抱く未来への危機感
高校野球は、どうしてもお金がかかる。それはサッカーやバスケットボールなどと比べて、否定できない現実だ。
初期費用は、道具をそろえるだけで幅はあるものの10万円程度。これに、毎月の部費や合宿費なども加わる。
高校で硬式野球を始める軟式出身の選手たちは、道具をそろえ直さなければならない。練習着はスライディングで破れやすく、すぐに買い替えも必要だ。
響く物価高
さらに、今年の高校生たちを悩ますのは、物価高の影響だ。
硬式球を取り扱う「松勘工業」(埼玉県加須市)の安藤慎吾社長によると、ボールに使う牛革やポリエステルなどは、価格高騰の影響を受けているという。今年に入って、バット、グラブなどの定価を、最大3千円ほど値上げした大手メーカーもある。
埼玉県の新座高校の村松英高監督は「お金」を理由に野球を諦めようとしてきた生徒を何人も見てきた。
「家のガス代を払わなければいけない」という生徒もいれば、道具が違う硬式野球を経済的に始められない軟式出身の生徒もいる。野球ができたとしても、指やかかとに穴が開いたソックスをはき続けている選手もいた。
ある部員は2年生の終盤になって、ようやく硬式用のグローブを買うことができた。それまでは、「ひっくり返せるほど柔らかくなった」軟式のグラブを使い続けていたという。
ルール変更の重み
ルールの変更も選手たちに重くのしかかりそうだ。
打球の飛びすぎを防ぐため、高野連主催の大会で使用できる金属バットの規格が2024年に最大直径が現行のものより3ミリ細い64ミリ未満になる。当然、現行品は使えない。そのため、各チームは買い替えを余儀なくされる。
「これからも高校野球が発展し、続いていくためには何が必要か」
朝日新聞は埼玉県内の高校野球の指導者に尋ねた。
「家庭における金銭的負担は、他のスポーツよりもはるかに高い」
「お金のかからないスポーツにする」
「初期費用が高すぎるので、抑える必要がある」
挙がった答えは、金銭面の負担軽減を求める声が目立った。
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